雑誌「美術屋・百兵衛」の取材で、先日、台湾に行ってきました。
ちょうどこの時期に開催されているアジア最大級のアートフェア、
ART TAIPEIの会期に合わせた日程になりました。
関西空港から出発した飛行機が台湾の玄関口、桃園国際空港に午後1時過ぎに着き、
それから入国審査などを終え、タクシーで40分ほどかかる台北に行きました。
実はこの日の午後3時に、國立故宮博物院の取材のアポが入っていたのです。
ホテルに荷物を置くと、すぐに故宮に向かいました。
エントランスを入ったところで出迎えてくれるのは、
中華民国(台湾)で「国父」と呼ばれる孫文。
100元(ニュー台湾ドル)紙幣にその肖像が描かれるなど、
今もこの国の人々にとっては親しみある存在のようです。
さて、事前に連絡を取り合ってた広報担当者と落ち合うと、
すぐに貴賓室(VIP Lounge)という場所に通されました。
実は、この大きな博物館の副院長のインタビューを行うのです。
「副」とは言っても、かなりの大物です。
國立故宮博物院の院長は、日本で言えば大臣クラスであり、
副院長は、いわば事務方のトップなのです。
このチャーミングな女性が、副院長の李靜慧(Lee Ching-Hwi)さん。
思った以上に若い方でしたが、さすがに聡明そうでした。
凄い肩書きを持っているのに、威張ったところなど全くなく、
非常にフランクに、率直に、真摯にインタビューに答えていただきました。
どうもありがとうございます。
インタビューが終わると、日本語ガイドの方が付いて、館内を案内してくれました。
さすがは國立故宮博物院。
中国四千年の歴史を彩ってきた名品がそこかしこに展示されています。
有名どころでは、あの「翠玉白菜」。
一昨年日本で行われた特別展「台北 國立故宮博物院-神品至宝-」で、
実物をご覧になった人も多いのではないでしょうか?
この一点のために専用の展示室が作られていましたが、
さすがは人気の逸品だけに、常に多くの人だかりでした。
この「翠玉白菜」はただ単に鑑賞するだけでなく、
おみやげとして持ち帰ることができるんです。
もちろん本物ではありませんが、1Fのミュージアムショップで、
150元(約500円)のキーホルダーや、
同じく150元のストラップが売られており、
日本人を中心に人気を集めているとのことでした。
ちなみにミュージアムショップで最近最も売れているのが、
日本でも女性の間で人気の高いマスキングテープ(マステ)。
絵柄の入ったものや漢字をデザインしたものなど、バラエティに富んでいました。
展示に戻りましょう。
中国の古代文明を象徴する青銅器も、なかなかの充実ぶりでした。
中でも貴重な品と言えば、やはり「毛公鼎」は欠かせません。
かなり巨大な銅製の食器で、煮炊きする際に使われたとか。
ただ、この「毛公鼎」がなぜそれほど基調かというと、
その内面にびっしりと文字(金文)が刻み込まれているから。
鋳刻された三十二行、五百文字は、世界で最も長い銘文だと言われています。
青銅器にはユニークな形のものも数多くあります。
例えば、動物の形をした「嵌松緑石金属絲犧尊」。
これは戦国時代に作られたもので、背中からお酒を入れ、
古代の〝ゆるキャラ〟っといった風情でしょうか。
中国は英語でChinaと言いますが、chinaには「磁器」という意味もあります。
中国文明にとって、磁器は切っても切り離せないものなのです。
ここで紹介したいのは、北宋時代に汝窯で焼かれた「蓮花型温碗」。
私の下手な写真ではよく判らないかもしれませんが、
実物はとても美しい、淡いブルーをしています。
細かな貫入が入っているところも、高い評価につながっているのでしょう。
ぜひ現地に行ってみなさんの目で観て欲しい逸品です。
この他にも素晴らしい名品揃いなのは言うまでもありませんが、
すべての展示室を回れたわけではなく、また、ここで紹介できる余裕もありません。
コレクションと同じぐらい注目してほしいのが、その展示の美しさです。
インテリアや展示方法、ちょっとした飾り付けなど実に赴き深く、
さすがは中国皇帝の秘宝を収蔵・展示する博物館だと思いました。
レプリカを利用して、来館者が実際に触って学べる展示もありました。
日本でもこうした展示方法を取り入れている館はありますが、
人々が文化や美術にもっと親しめるよう、
さらに多くの施設で取り入れてほしいものです。
今回紹介いたしました國立故宮博物院の詳しい情報は、
来年1月27日に発行する雑誌「美術屋・百兵衛」No.40に掲載しますので、
約2か月後を楽しみにお待ちください。
■國立故宮博物院■概要
住 所:台北市士林区至善路2段221号
時 間:8:30~18:30(金・土曜日は21:00まで)
休 日:年中無休
料 金:一般250元(団体割引あり)
URL:https://www.npm.gov.tw/ja/Article.aspx(日本語サイト)