1986年末から1991年の年始にかけて、みなさんは何をされてましたか?
1963年生まれの私が23〜27歳の頃です。
普通に大学を出ていたら社会人の2年目から入社5年目ぐらい。
ただ私の場合は、大学に7年も行ってしまったので、
日本がバブル景気に沸いたこの頃はまだ学生で、
バブル末期でやっと社会人になったぐらいでした。

3年も留年してしまったために就職活動はうまく行かず、
結局大学を出て就いた仕事は公務員。
あまりバブルとは関係のない生活をしていたような気がします。
(その安定した仕事も、間すぐ自分から捨ててしまいましたが)
それでも、少しはその恩恵を受けたのでしょう。
失われた10年と、それに続く今日までの15年ほどは、
当時の感じた、浮かれるような高揚感はありません。
あくまで個人的な感想ではありますが。

さて、そのバブル期前後に、漫画というジャンルで活躍していた岡崎京子
下北沢で生まれ育ち、女子大時代にデビューし、
その頃に新宿にあったディスコ「ツバキハウス」に通っていたという
田舎育ちの私から見たら、まさに憧れの存在のようなシティガールです。
映画化された「ヘルター・スケルター」の原作者と言えば、
80年代、90年代、あるいは00年代生まれの人もわかるのではないでしょうか。

先週の日曜日に、その岡崎京子の展覧会へ行ってきました。
岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ」です。

その他の代表作は「pink」「リバーズ・エッジ」などでしょうか。
1980−90年代を象徴するマンガ家・岡崎のおそらく初となる大規模回顧展で、
原画をはじめ、学生時代のイラストやスケッチ、掲載された雑誌、
さらに映画の関連資料などを通して、岡崎京子をとりまくカルチャーや
女性、社会、時代までを考察していこうという内容でした。

私がこの展覧会を観に、伊丹市立美術館へ行ったのは先週の日曜日。
7月末から始まった会期の最終日ということもあったのでしょうか、
伊丹市立美術館にしてはかなり多い人が来館されてました。
若い人からお年寄りまで、けっこう年齢層が幅広かったようです。
展示室は当然、写真不可でしたが、
館内のところどころに撮影ポイントがあったので、その写真をアップしましょう。







作品も良かったのですが、
彼女が活躍した時代を思い起こさせてくれるような資料が、個人的にはツボでした。
「あー、こういうことあったな」とか、
「そうそう、こんなもの流行ってた」など
バブルテイストあふれる情報がたくさんあって、
その時代に自分がなにをしていたのかを懐かしく思い出してばかり。
ニューウェーブの音楽やファッション、休刊になった雑誌……
岡崎京子が私と同じ1963年生まれということもあって(学年は1つ違いますが)、
同時代を生きた人間同士にしかわからない、連帯感を感じたぐらいです。

まあ、実際には周囲の環境などは全く違うでしょうし、
こちらから一方的に親近感を持っただけで、
岡崎さんが私にそんな思いを抱くことはないでしょうが。
ただ、バブルの申し子のように見える彼女も、
内面にはいろんな悩みや痛みを抱えていたんだと思います。
自伝的な作品ではないんですが、「ヘルター・スケルター」などの作品には、
そんな彼女の内側が色濃く反映されているのではないかと思います。

図録を買おうかどうか迷いましたが、一般書籍として販売されており、
amazonからも入手できそうなので、後日注文することにしました。

断片的かもしれませんが、いくつか漫画も掲載されているようです。
バブル期の若者文化のカタログのような側面も持っているのではないでしょうか。

この「岡崎京子展」は関西での開催は終わってしまいましたが、
12月から福岡市の三菱地所アルティアムへと巡回します。
「しまった、見逃した! どうしても観たい」という方は、
ぜひそちらへ足を延ばしてみてください。

■岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ■
会場:三菱地所アルティアム
住所:福岡市中央区天神1-7-11 イムズ8F
会期:12月3日(土)〜2017年1月22日(日)
時間:10:00〜20:00
休館日:12月31日(土)、1月1日(日)
入館料:一般400円、学生300円、高校生以下、障がい者等とその介護者1名は無料

さて、伊丹市立美術館に話を戻しましょう。
この美術館の近くには江戸時代から続く伊丹の酒蔵が立っており、
美術館自体も酒蔵や古い商家を思わせる、白壁の土蔵のような建物です。

中庭には日本庭園が設えられており、落ち着いた雰囲気。

同じ建物内には、柿衞文庫(かきもりぶんこ)といおう施設もあります。
これは、実業家で、国文学者、元伊丹市長でもあった岡田利兵衞(号は柿衞)が
伊丹市に寄贈した貴重な品々をコレクションしているもので、
著名な俳人の直筆資料約6000点、
「奥の細道」を含む俳書・俳画等を約5000点があります。
そのコレクションは年に数回テーマを決めて展示されており、
先週は「おにつらくんと楽しむ四季の鳥」という展覧会が開かれていました。

「おにつらくん」とは、伊丹が生んだ優れた俳人、
松尾芭蕉とほぼ同じ時代を生きた上島鬼貫をキャラクター化したもの。
いわゆる「ゆるキャラ」でしょうか?
ポスターの右側は「ゆるキャラ」ではなく、れっきとした美術作品。
この展覧会に出品されていた俳句に添えられていた江戸時代の画です。
他にも応挙が添え描きしたものがあるなど、
意外にもアートの穴場的なスポットなのです。