東野圭吾さんが1994年に執筆した小説。 その後、『秘密』(1998年)をきっかけに東野さんはベストセラー作家になっていくのですが、その少し前の作品です。

 

どなたかの読書ブログに紹介されていて、あれ?読んだことないと。 この頃の東野作品はかかさず読んでいたはず(最近は選びますが(^^;))ですが、本作は何故か読み逃していました。

 

 

「あたしには幼い頃の記憶がないの」理学部研究助手の私は、元恋人・沙也加の記憶を取り戻すため、二人で山中に建つ白い小さな家を訪れる。

同時刻で止まった時計、数々の不自然な痕跡、そして少年の奇妙な日記。 この家で何が起きていたのか。 衝撃の結末が、誰もが心に抱える孤独へ切り込む傑作ミステリー。 (文庫裏紹介文)

 

登場人物は、理学部物理学科の研究助手である主人公と、その元恋人・沙也加の二人だけ。 舞台は山中に建てられた小さな白い家にほぼ限定されるという、ある種の密室劇でした。

 

登場人物が限定される密室劇は大好きで、岡嶋二人『そして扉が閉ざされた』、恩田陸『木曜組曲』など、映画やドラマでも『十二人の怒れる男』や『王様のレストラン』などは傑作ですよね。

 

本作は登場人物2人という究極の設定で凝縮感・緊張感が高い上に、舞台となる小さな白い家がいかにも怪しいのです。

 

20年以上誰も住んでいない家。 しかし、キッチンにはコーヒーカップが片付けられずそのままになっており、子供部屋の勉強机には教科書とノートが広げられています。

 

引っ越しではなく突然いなくなった? さらに、家の中のすべての時計が同時刻で止まっているという奇妙な現象、残された日記の不穏な記述。  緊張感が高まります。

 

前半でばら撒かれた多数の伏線。 いかにも奇妙に思えたこれらが、終盤になって回収され、沙也加の哀しい過去に収束する構成は見事でした。 さすが東野さん、私は傑作を読み逃してましたねー。

 

さらに、最後まで名前が出てこなかった主人公は誰なのか? 物理学科の研究者で、見事な推理力、そして生い立ちは『透明な螺旋』で明らかになったガリレオこと湯川学とまったく同じでした。

 

本作はガリレオシリーズのスタートよりも数年前に書かれたものであり、この主人公と湯川学の関係について東野さんの発言は無いようですが、もし同一人物だったとしたら、本作から『透明の螺旋』まで27年越しの伏線回収! 凄すぎます。

 

初期の東野作品の中でも屈指の傑作と言っていいでしょう。 お勧め。