恩田陸さんは、ファンタジー、ホラー、SF、ミステリーから、青春小説や音楽小説まで、非常に幅広いジャンルの小説を精力的に執筆している作家です。

 

ただ、私的には非常に扱いの難しい作家で、とても気に入った作品(「光の帝国」「ドミノ」、「夜のピクニック」、「チョコレートコスモス」「蜜蜂と遠雷」など)と、どうにも収まりが悪くもやもやする作品にはっきりと分かれます。

 

作品によって、これだけ好悪が分かれる作家も珍しいですね。

 

本作は2020年の刊行で「ドミノ」の続編です。 

 

「ドミノ」は東京駅を舞台に、本来無関係な27人(と1匹)が相互にかかわり合い、ドミノのように運命に押し倒されていくという、ノンストップエンターテインメントコメディでした。

 

本作は「ドミノ」から5年後が描かれていて、舞台を上海に移し、「ドミノ」の登場人物も含めた25人(と3匹)の運命のドミノ倒しが再び巻き起こる・・・という物語。

 

上海のホテル「青龍飯店」で、25人(と3匹)の思惑が重なり合う――。 もつれ合う人々、見知らぬ者同士がすれ違うその一瞬、運命のドミノが次々と倒れてゆく。 恩田陸の真骨頂、圧巻のエンタテインメント! (BOOKデータベースより)

 

物語の中心にあるのは密輸された「蝙蝠」と呼ばれるお宝と、それを追う窃盗グループ、香港警察、骨董商。 偶然お宝を手にすることになる青龍飯店料理長、日本人OL。 さらに動物園を脱走するパンダと飼育員や上海警察、寿司デリバリー会社などが入り乱れます。

 

560ページの大冊ですが、視点が次々と入れ替わってテンポよく進むので、退屈しません。 特にパンダの視点はコメディ感とハードボイルドが入り混じって可笑しかったです。

 

別々の目的をもってバラバラに行動していた登場人物たちが、やがて絡み合って1つの場所に集結し、ラストに向かって雪崩れ込んでいくという500ページ以降の描写は圧巻です。 恩田陸さん、さすがの筆力ですね。

 

ただ、(ちょっと記憶が曖昧なんですが)前作「ドミノ」のほうが物語の凝縮感、ラストの加速度という点で上回っていたような気がします。

 

こちらもノンストップエンターテインメントコメディと言えますが、出来れば前作「ドミノ」からどうぞ。