暗くて重~い話の多い貫井徳郎さんで、しかもタイトルが「悪の芽」となれば読後感の悪さは覚悟せざるを得ません(^^;) 

 

それでも読みたくなるのが貫井作品なんですよねー。

 

世間を震撼させた無差別大量殺傷事件。 事件後、犯人は自らに火をつけ、絶叫しながら死んでいった――。 元同級生が辿り着いた、衝撃の真実とは。 現代の“悪”を活写した、貫井ミステリの最高峰。 (BOOKデータベースより)

 

主人公は大手都市銀行に勤める安達周。 安達はニュースを見て、大量殺傷事件の犯人である斎木均が小学校の時の同級生であることに気付きます。

 

斎木は安達があだ名をつけたことが原因でいじめられるようになり、その後不登校になってしまったのです。

 

斎木の人生を歪め、大量殺傷事件へとつながった原因は自分にあるのではないか?

 

悩みぬいた安達は、斎木の犯行につながった(安達の行為とは別の)「悪の芽」を探して、斎木の人生をたどって行くのですが・・・というストーリーです。

 

斎木の過去の人生で、いじめ、教師の無責任、ブラック企業、職業差別、格差社会、ネットでの暴露などなど、現代社会の不条理が次々と露わになっていきます。 

 

大きなストーリー展開があるわけでもなく、ミステリ的な驚きもそれほどありません。 それでもぐいぐい読まされてしまうのは、やはり貫井さんの語り口の巧さなんでしょう。

 

悲劇の根本原因を社会の不条理につなげるところは「乱反射」を思わせます。 しかし本作の場合は納得感が得られなかった。 浮き彫りになった斎木の人柄と事件とのギャップがあまりに大きすぎました。

 

貫井作品らしくなく(笑)、最後は爽やかなエピローグだったので惜しいですねー。