ブロ友さんの記事で知った小説です。 インパクトのあるタイトルと、ポップで可愛い表紙絵で印象に残っていました。

 

第99回オール讀物新人賞受賞作。 「全篇にわたって楽しい」有栖川有栖。 「無条件に楽しんで読むことが出来た。ああ、面白かった」乃南アサ。 ニヤリ、クスリ、ホロリ選考委員も癒された、新・癒し系時代奇譚。


叔父を訪ねて大坂へ向かった男の道ずれは、首だけのサムライだった⁉(受賞作「首ざむらい」) とある若侍が死体で発見された。下手人は河童らしく……。(書下ろし「よもぎの心」) 現代人の疲れた心と疲れた身体に、ただただ楽しく、チャーミング(&時々すっとぼけ)な時代小説をご用意しました!  (BOOKデータベースより)

 

「首ざむらい」、「よもぎの心」、「孤蝶の夢」、「ねこまた」という4編が収録されていて、しゃべる生首、河童、猫又など、怪異がテーマになった時代小説集でした。

 

「首ざむらい」はオール讀物新人賞受賞作。 怖ろし気に登場した生首が主人公・小平太と道ずれになり、やがて不思議な絆が生まれていきます。

 

道中の2人?の会話も可笑しいし、ラストも爽やかで良かったです。 ”怪奇”な物語ではなく、タイトルにもあるように”快奇”な江戸物語でしたね。

 

しかし、紹介文にあるように「ただただ楽しく、チャーミングな時代小説」かというとそうではありません。 「よもぎの心」ではなんとも悲しいラストが描かれ、無常感まで漂います。

 

4編の根底にあるのは、超自然的な怪異ではなく、辛い事情を抱えて生きる人間の姿なのでしょう。 ユーモアと爽やかなラストを持つ「首ざむらい」さえも、そういう切なさが感じられますね。

 

怪異がテーマの時代小説と言うと、「あかんべえ」など宮部みゆきさんの諸作や畠中恵さんの「しゃばけ」シリーズなどが思い出されますが、そのどちらとも異なる個性を持った作品でした。