一穂ミチさんを読むのは、「スモールワールズ」「パラソルでパラシュート」に続いて3作目になります。

 

「光のとこにいてね」というタイトルも魅力的だし、直木賞&本屋大賞ノミネートなど、評価の高い作品でした。

 

古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。 着るものも食べるものも住む世界も。 でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。 彼女が泣くと、私も悲しくなった。


彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。 ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。 どうして彼女しかダメなんだろう。 どうして彼女とじゃないと、私は幸せじゃないんだろう……。 (BOOKデータベースより)

 

結珠(ゆず)と果遠(かのん)。 結珠は裕福な医者の家庭に育ち、果遠は貧しい母子家庭に育ちます。 どちらも母親の愛情が注がれなかった2人の少女の物語でした。

 

小学2年生で彼女たちが初めて出会うシーンがまず秀逸です。 3階のベランダから下を見る果遠、下で目いっぱい両手を伸ばす結珠、まるで落ちておいでというように。

 

このシーンだけでなく、高校生での再会、29歳になってからの再会、そしてラストシーンと、映像が浮かぶような印象的なシーンが多かったですね。

 

また、パッヘルベルのカノンのピアノ演奏や、ギュスターヴ・ル・グレイの写真、白詰草、防犯ブザーなど、キーアイテムがストーリーに埋め込まれ、「光のとこにいてね」というセリフが繰り返されるのも上手いです。

 

 

そんなこんなで、女性同士の友情とも恋愛ともつかない微妙な関係という、オジサンにはなかなか理解が及ばないテーマにもかかわらず、面白く読むことが出来ました。

 

ただ、ラストはこうなってしまうんですかねー。 彼女たちの周囲の人物に良い人が多いだけに(母親は別です(-_-;)、この選択には納得できませんねー。

 

トータルでは緻密に構成しつつ躍動感もある面白い小説だったので、ちょっと残念でした。