八重野統摩さんは、1988年札幌市生まれ。

 

立命館大学経営学部を卒業後、書店員をしながら執筆活動を続け、2012年にメディアワークス文庫で小説家デビューしました。

 

メディアワークス文庫から4作(ラノベ系かな?)刊行後、2019年東京創元社から刊行した「ペンギンは空を見上げる」が坪田譲二文学賞を受賞します。

 

年初に読んだ「ペンギンは空を見上げる」がとっても良かったので、本作も期待して読みました。

 

12月の北海道。中学2年の少女・沙耶(さや)は、自分を日常的に虐待をしてきた両親が、今夜、海で自分の殺害を計画していることを知っていた。 ところが下校途中「児童相談所の職員」を名乗る男の車に乗せられ、そのまま誘拐・監禁される。

 

監禁下の交流から、ふと彼女は、男が、じつは「本当の父親」ではないかと疑い始める。 一方、男は身代金2000万円が目的の営利誘拐であると犯行声明を北海道警察に送りつけ、粛々と計画を進める。 男は一体、誰で、目的は何なのか? (BOOKデータベースより)

 

美味しい料理、暖かい部屋、清潔な衣服・・・それまでは虐待されるばかりで、主人公・沙耶が享受できていなかった安らげる日常。

 

それが誘拐されて初めて味わえるというのは、なんと悲しいことなのでしょう。

 

それでも誘拐犯・渡辺は、沙耶のことを本当に大事に扱ってくれるのです。 徐々に気持ちが通じ合っていく二人のやりとり(特にクリスマスのあたり)は、微笑ましくも切ないですねー。

 

渡辺の真の目的は何なのか? 父親なのか? だったら誘拐などという手段をとらずとも・・・。 と色々考えつつ先が気になって一気読みでした。

 

ラストは想像もしていなかった真実が明らかになって、驚くと共に涙がこみ上げます。

 

誘拐という手段しかなかったのか?という疑問はまだ残るのですが、感動に押し倒されてしまいました(^^;)

 

八重野作品は、ラストでの謎解きがそのまま感動につながるのが特長ですね。 お勧めです!