”ノンフィクション・ノヴェル”とは、実際の事件や出来事に基づきながら、細部を創作して、より臨場感を高めた小説。 フィクションとノンフィクションの中間のような存在です。

 

本作は、主人公の作家がノンフィクション・ノヴェルを執筆するため、1984年に発生した小学生誘拐事件を当時の関係者に取材し、真実に迫っていくという設定で描かれていました。

 

前知識なしで読んだため、これが事実であるのか創作であるのか判然としないままラストまで行きましたが、巻末にはベースとなった1984年札幌市(城丸くん事件)と1991年千葉市(佐久間奈々さん事件)という未解決誘拐事件が記されていました。

 

小4男児が自宅を出たまま失踪した。 時効目前の15年後、子供の骨を持ち運んでいた女が殺人容疑で逮捕される。 女は苛烈な取り調べにも沈黙を貫き、判決は無罪。

 

――やがて別の失踪事件との間に奇妙な共通点が浮上する。実在の未解明事件をベースに、あの福田和子にも擬された「沈黙の魔性」を描く実話ミステリーの新境地。 (あらすじより)

 

事件が起こった場所や人名は変えていますが、事件の概要や裁判の経過は事実と一致しており、実在の事件がベースであることは間違いないでしょう。(読後Wikiで調べてみました)

 

ただし、事件の真相にミステリ要素を持たせ、本来関係のない2つの事件のつながりを推理していくストーリーは作者が想像したものだと思います。

 

未解決事件の意外な犯人、意外な真相が含まれるストーリーは面白いのですが、残念ながらこれが実際の事件の解決につながるわけではないんですよね。

 

なので、実際の事件の真相をリアルに追いかけたノンフィクション(たとえば清水潔さんの「桶川ストーカー殺人事件」や「殺人者はそこにいる」)と比べると迫力の点で劣るのはしかたがないところでしょう。

 

ストーリー自体は面白いので、どこまでが現実でどこからがフィクションか考えながら読んでみるのも興味深いかもしれません。