寺地はるなさんは、1977年佐賀県唐津市生まれ。

 

 会社勤めと主婦業の傍ら35歳から小説を書き始め、2014年に「ビオレタ」がポプラ社小説新人賞を受賞して作家デビューしました。

 

ブロ友さんたちの間で評価が高いので気になっていたのですが、私の守備範囲とはちょっと外れているのでこれまで読まずにいました。

 

同じような位置付けだった作家に藤岡陽子さんがいて、彼女の作品は2年ほど前に初めて読んで気に入り、継続して読み続けています。

 

今回初の寺地作品ですがさて・・・。

 

閉塞的な村から逃げだし、身寄りのない街で一人小説を書き続ける三島天は、ある日中学時代の友人のミナから連絡をもらう。 中学の頃に書いた、大人になったお互いに向けての「手紙」を見つけたから、30才になった今開封しようというのだ――。

 

他人との間で揺れる心と、誰しもの人生に宿るきらめきを描く、感動の成長物語。 (BOOKデータベースより)

 

三島天、小湊雛子(ミナ)、吉塚藤生という中学校の同級生3名の物語。 中学時代、そして16年後の現在を3人の視点を章ごとに変えながら語っていきます。

 

日常に反抗心を持ち、我が道を行く的性格の天。 都会から引っ越して来て、優しい性格と洗練された容姿のミナ。 整った顔立ちで女子からモテるが、むしろそれがコンプレックスの藤生。

 

藤生は天が好きですが口には出せない、ミナは藤生が好きですが口には出せない、天は藤生の気持ち気付かず、ミナのために藤生とミナをくっつけようとする・・・

 

恋愛感情ではすれ違い、閉鎖的な集落と辛い家庭環境もあって常に悶々としている中学生時代が描かれます。 お互いの辛い内面がわからないので、「どうしてわたしはあの子じゃないの」というタイトルのような感情も出て来るのでしょう。

 

思春期特有の鬱屈した感情・・・自分の中学生時代を思い出しました。

 

16年後の章では、中学生の時に書いた「手紙」の内容が明らかになり、「わたしが他の誰かになれないように、他の誰かもまたわたしにはなれない」という言葉で前向きに終わるのですが、何となく解決されない気分も残りましたね。

 

ままならない境遇や鬱屈した感情が丁寧に綴られている小説で、こういうのが寺地作品なのかな? もう一作読んでみたいと思っています。