鈴木るりかさんは、2003年東京生まれ。 小学4年生だった2013年、小学館主催の「12歳の文学賞」に、短編小説『Dランドは遠い』で受賞。 2014年、2015年と3年連続で大賞を受賞しました。

 

2017年には過去の受賞作品を改稿した2編に加え、新たに3編を書き下ろして本作「さよなら、田中さん」を刊行、中学生作家としてデビューしました。

 

ブロ友さんの間では話題になっていたようですが、私は最近までこの本の存在を知らず、遅まきながら読んでみることにしました。

 

田中花実は小学6年生。ビンボーな母子家庭だけれど、底抜けに明るいお母さんと、毎日大笑い、大食らいで過ごしている。

 

そんな花実とお母さんを中心とした日常の大事件やささいな出来事を、時に可笑しく、時にはホロッと泣かせる筆致で描ききる。 今までにないみずみずしい目線と鮮やかな感性で綴られた文章には、新鮮な驚きが。 (BOOKデータベースより)
 

『いつかどこかで』、『花も実もある』、『Dランドは遠い』、『銀杏拾い』、『さよなら、田中さん」という5編の連作短編集になっていて、1編目と3編目が小学生の時の受賞作品です。

 

主人公は小学6年生の田中花実。 お父さんがいなくても、貧乏で欲しいものが買えなくても、明るく前向きに日々を過ごします。 様々なことを豪快に笑い飛ばすお母さんがいることもあるでしょう。

 

『いつかどこかで』と『Dランドは遠い』を読むと、改稿しているとはいえ表現は豊かだし、文章のテンポも良いし、とても小学生が書いたものとは思えません。

 

『花も実もある』、『銀杏拾い』になると、さらに物語の起伏が増して作者の成長がうかがえます。

 

お母さんが縁談を断られた時の切ない気持ち、同級生が七五三をやっているのを見ても羨ましいと思わなかった気持ち、花見の心情が実に丁寧に描写されています。

 

しかし、もし最後まで花実の視点で描かれていたら、感心はしたでしょうが感動までつながらなかったかも知れません。

 

ラストの『さよなら、田中さん』では、一転して花実の同級生・三上信也の視点で語ることによって、同級生らと比較して花実がいかに素晴らしいか、その魅力がぐんぐん伝わってくるのです。 上手いですねー。

 

そして、中学受験に失敗して絶望した信也がいかに救われたのか? その顛末と家族の物語に思わず涙が・・・。

 

中学生の書いた小説に泣かされるとは思いませんでした(^^;)

 

中学生で本作を書いた鈴木るりかさんは、その後高校、大学と進み、本作の続編を3作執筆しています。 どのように進化しているか、読むのが楽しみです。 お勧め!