昨年読んだ伊吹亜門さんの「刀と傘」は、幕末から明治初期に活躍した江藤新平という実在の人物を登場させた魅力的な歴史ミステリでした。

 

本作はその前日譚にあたる物語。 登場するのは、坂本龍馬、西郷隆盛、桂小五郎、土方歳三など、江藤新平よりもさらに馴染みのある(?)面々でした。

 

慶応元年、坂本龍馬の仲介により薩摩藩と長州藩は協約を結ばんとしていた。 しかし、一件の凶事が協約の締結を阻む。 上洛していた薩摩藩士が稲荷神社の境内で長州藩士を斬り付けたというのだ。

 

このままでは協約協議の決裂は必定、倒幕の志も水泡と帰す。 憂慮した龍馬の依頼を受けて、若き尾張藩士・鹿野師光は単身捜査に乗り出す。 歴史の大きな転換点の裏で起きた、不可能犯罪の真実とは。 (BOOKデータベースより)

 

犬猿の仲であった薩摩藩と長州藩が同盟を結ぶというのは、その後の倒幕&明治維新につながる歴史上の重要な出来事です。

 

その重要性を理解する坂本龍馬や西郷隆盛が、彼らなりの論理で事件にかかわってくるという、歴史ストーリーとして読んでも非常に面白い物語でした。

 

ミステリ的には、中心となる下手人消失の謎解きが、あまりにもあっさりしすぎて拍子抜けしました。 ミステリ的には「刀と傘」に見劣りしますね。

 

しかし、歴史ストーリーとしては、一見豪放磊落な坂本龍馬や西郷隆盛がその内面で何を考えていたかまでしっかりと語ってくれるのが興味深い。

 

そして、その中で架空の人物である主人公・鹿野師光が謎解きのみならず裏側の真実を見事に解明するのがカッコ良かったです。

 

歴史ミステリお好きな方にはお勧めです。