1998年、大蔵省の官僚らが銀行から接待を受けていたことが発覚します。 7人が逮捕・起訴、実に大蔵官僚112人が減給や注意処分を受けました。

 

官僚が接待を受けていたのが新宿のノーパンしゃぶしゃぶ店であったことから、「ノーパンしゃぶしゃぶ接待汚職」とも呼ばれた事件。 本作はこの事件を題材にした、月村さんお得意の昭和史ものでした。

 

1998年ノーパンすき焼きスキャンダル発覚、大蔵省設立以来最大の危機が訪れる。 黒幕の大物主計局長、暴力団幹部、総会屋総帥、敏腕政治家らの思惑が入り乱れるなか、 “大蔵省始まって以来の変人”霞が関のダークヒーロー・香良洲圭一が現れた! 

 

驚愕のラスト、香良洲の決断に読者は震撼する!! 前代未聞の官僚ピカレスクロマン。 (BOOKデータベースより)

 

橋本龍太郎、小渕恵三、宮澤喜一、加藤紘一、梶山静六、新井将敬など、当時の政治家の実名も登場し、事件の経緯や大蔵省内部の衝撃の大きさはリアルに描写されています。

 

しかし、主人公の課長補佐・香良洲を含め、女性議員・錐橋、暴力団若頭・薄田、興信所の女性所長・神庭など、架空の登場人物たちがあまりにエンタメ寄りなんで、ちょっと違和感がありましたね。

 

錐橋と薄田の恋愛模様など、完全なコメディになっていました。 先日読んだ「ビタートラップ」は月村さんには珍しいコメディだなと思いましたが、本作からその傾向はあったんですね。(本作は「ビタートラップ」の一年半前に執筆)

 

ラスト、主人公・香良洲が行った禁断の手段について、同僚が言った言葉が意味深でした。

 

「若手連中はみんなおまえのやったことを知っているんだ。 近い将来、今の若手が幹部になった頃、大蔵省に何か一大事があったら、連中はきっと思い出す。 おまえのやった手口をな」

 

なぜ意味深なのかを言うとネタバレになるので読んでもらうしかないかな。

 

面白かったけれど、やはり月村作品は重量級なのが好きですね。 「機龍警察」の次の巻を読みたくなりました。