金正恩独裁体制に絶望し、日本への亡命を企てた北朝鮮軍人たちが、拉致被害者の女性(横田めぐみさん)を連れて潜水艦で日本へ向かう・・・・。 驚くべきストーリーでした。

 

北朝鮮の陸海空軍による大規模軍事演習。 国の威信をかけたこの行事で、桂東月大佐は潜水艦による日本への亡命を決行した。 しかも、拉致被害者の女性を連れて―。

だが、そんな彼らを朝鮮人民軍が逃すはずがない。

 

特殊部隊、爆撃機、魚雷艇、対潜ヘリ、コルベット艦、そして・・・。 息つく間もなく送り込まれる殱滅隊の攻撃をくぐり抜け、東月達は日本に辿り着けるか? 極限状況ゆえに生まれる感涙の人間ドラマ。 超弩級エンターテインメント! (BOOKデータベースより)

 

月村了衛さんには、「土獏の花」という冒険活劇の王道を行く小説がありましたが、本作も負けず劣らずのアクションストーリー。 ソマリア国境付近でPKO派遣の自衛隊が活躍する「土獏の花」に比べると、本作のほうが身近な問題に感じられました。

 

45年前に北朝鮮に拉致された女性は、広野珠代さんという名になっていましたが、「拉致被害者のシンボル的存在」ということで、明らかに横田めぐみさんがモデルなのでしょう。

 

亡命を阻止するため送り込まれる水上艦、対潜ヘリ、特殊任務船、コルベット艦。 息つく間もない戦闘で疲弊した後、襲いかかる同型の潜水艦。 手を変え品を変え描かれる白熱の戦闘シーンは、さすが月村作品ですね。

 

日本側では、45年前に拉致事件を見過ごしてしまったという後悔をかかえる元警官と漁師。 及び腰で意思決定できない日本政府をしり目に彼らがどんな活躍をするのかも見どころです。

 

最近は以前のような冒険活劇小説が少なくなっていた月村さんですが、久々にストレートでワクワクするような冒険小説を味わわせてもらいました! お勧め。