幻冬舎文庫から「パティシエの秘密推理 お召し上がりは容疑者から」というタイトルで刊行されていたものを加筆修正して、タイトルも変更して光文社文庫から出版した作品。 そういうパターンもあるんですねー。

 

こうやって比べてみるとやはり、再版のほうが売れ筋ですかね。 旧版はちょっとタイトル長すぎだし(笑)

 

洋菓子が美味しい喫茶店プリエールは、店主の兄・季と、元警官でパティシエ役の弟・智が切り盛りする隠れ家的お店だ。 優秀な警官だった智を連れ戻そうと店に詰め掛けるのは、県警秘書室の直ちゃん。

 

彼女が持ち込む未解決事件を、兄弟で捜査することになって――。 四つの奇妙な殺人事件を、名探偵の兄弟の絆と甘いケーキが解決に導く。 ほろ苦く切ない傑作ミステリー。 (文庫裏紹介文)

 

『喪服の女王陛下のために』、『スフレの時間が教えてくれる』、『星空と死者と桃のタルト』、『最後は甘い解決を』という4編の連作ミステリです。

 

第1話と第2話は、似鳥さんにしてはごく普通の短編ミステリ。 直ちゃんこと直井楓巡査のキャラクターが際立ってはいますが、この水準ならこれまで読んだ似鳥作品の中では下位かなー。

 

と思って読んでいたら、第3話から面白くなってきます。 トリックも秀逸ですが、福島第一原発の風評被害問題が語られて、にわかに雰囲気がシリアスに。 こういう社会問題の扱いも似鳥さんは上手いです。

 

そして第4話です。 第1話から登場し、準レギュラー的な存在だった女性弁護士の過去。 6歳の時に母親を強盗に殺され、その13年後、今度は母親代わりに可愛がってくれていた近所の主婦が殺されるという未解決事件。 しかも凶器は同じ拳銃という。

 

『最後は甘い解決を』というタイトルに反して、事件の真相はどんどんブラックな様相を帯びてきて・・・・ああ、やはりそうなってしまったか。 この話は胸を揺さぶられました。

 

表紙とタイトルからはもっと軽い連作ミステリを想像していましたが、良い意味で裏切られました。 さすが似鳥さん、一筋縄では行かない作家ですね。