「傍聞き(かたえぎき)」、「教場」以来7年ぶりに読む長岡作品です。 とにかく「傍聞き」が素晴らしすぎて(このミス2位の「教場」も及ばなかった)、他の作品を読むとガッカリしそうでしばらく遠ざかっていました。
長岡作品は圧倒的に短編集が多いのですが、本作は「教場」と同じく連作短編形式ですね。
談合: 一人娘・真由が誘拐されて一か月、役場の仕事に復帰した白石千賀は、入札業者の不審な電話に衝撃を受ける。
追悼: 誘拐事件から二か月後、同じ町内に住む二十四歳の会社員・鈴木航介が死体で発見され、不思議なことにその表情には笑みが浮かんでいた。同僚の久保和弘はその一週間前、経理部員である航介から不正を指摘されていた。
波紋: 誘拐事件を追っていた刑事・渡亜矢子は、地道な捜査を続け、ついに犯人像に近い人物にたどり着くが・・・・・
再現: すべてのエピソードが一つの線になり、事件の背景に「誰かが誰かを守ろうとした物語」があったことを知る。
(文庫裏紹介文より)
上記4話にエピローグを加えた5話から構成された連作短編。 個々の短編にも驚きがあり、これらが組み合わさった全体のストーリー(幼女誘拐+殺人事件)にも意外な真相が隠されています。
さらに、それらのすべてには「誰かが誰かを守ろうとした」という背景があったという、非常に凝った構成でした。 よくもまあ、これだけ沢山のエピソードを1つの物語にまとめ上げたものだと感心しました。
ただし、複雑なプロットを成立させるために、登場人物たちに無理な行動をさせている部分が目立ちます。 たとえば、『談合』での登場人物が取る行動は不自然すぎるし、『波紋』での女性刑事の恋愛感情も理解しがたい。
これによって、ミステリ的ロジックには納得感があっても、物語が自然に入ってこないんですよね。 エピローグでの最後の謎解きなど、長岡さんの才能は感じられますが、作品トータルとしては失敗かなー。
巧緻な構成で謎解きも光るものがあるのに、惜しい作品でした。 「傍聞き」以外を読むとガッカリしそうという悪い予感が、半分くらい当たってしまった・・・・