2018年の「カササギ殺人事件」、2019年の「メインテーマは殺人」と、2年連続で”このミス”の第1位を獲得していたアンソニー・ホロヴィッツですが、なんと2020年も本作が1位。 3年連続で1位になるのは”このミス”史上初だそうです。

 

実直さが評判の弁護士が殺害された。 裁判の相手方が口走った脅しに似た方法で。 現場の壁にはペンキで乱暴に描かれた謎の数字“182”。 被害者が殺される直前に残した奇妙な言葉。

 

わたし、アンソニー・ホロヴィッツは、元刑事の探偵ホーソーンによって、奇妙な事件の捜査に引きずりこまれて―。 絶賛を博した『メインテーマは殺人』に続く、驚嘆確実、完全無比の犯人当てミステリ。 (文庫裏紹介文)

 

「メインテーマは殺人」と同様にワトソン役が作者のホロヴィッツ、ホームズ役が元刑事の探偵・ホーソーンという設定。 ホロヴィッツのミステリは、虚構の中に現実が入り込むメタミステリ的趣向が特徴的で、本作でもTVドラマ「刑事フォイル」の撮影現場に脚本家ホロヴィッツが訪れるという現実のシーンからスタートします。

 

「カササギ殺人事件」はこのメタミステリ的趣向による強烈な大技が決まった作品だったのですが、本作は単に読者の興味を引き付けるだけの役割でしかなく物足りないですね。 イギリスの作家や演出家などの著名人をよく知っていればもっと面白いのかもしれませんが・・・・・

 

肝心の謎解きミステリとしては、どうかというと・・・・・非常に多くの謎や伏線をストーリーに散りばめ、時折作者のモノローグ、たとえば「この時点で、わたしはすでに手がかりを三つ見のがし、二つ読み違えていた」などで読者を翻弄します。

 

そして、提示してきたすべての伏線を回収して、すべての謎が明らかにされるラストは素晴らしく、フェアプレイの正統派謎解きミステリの傑作だと思います。

 

ただ、真相の意外性としてはもう一歩というところでしょうか。 こういう端正なミステリならアガサ・クリスティの作品の中にもっと面白いものがあると思います。

 

私的採点をするならば、「カササギ殺人事件」100点、「メインテーマは殺人」90点、「その裁きは死」85点となるかな。