「君たちに明日はない」シリーズなど、現代小説が主体の垣根涼介さんですが、最近は歴史時代小説にも進出しています。 室町時代というのは珍しい時代設定ですね。

 

応仁の乱前夜。天涯孤独の少年、才蔵は骨皮道賢に見込まれる。 道賢はならず者の頭目でありながら、幕府から市中警護役を任される素性の知れぬ男。 やがて才蔵は、蓮田兵衛に預けられる。 兵衛もまた、百姓の信頼を集め、秩序に縛られず生きる浮浪の徒。

 

二人から世を教えられ、凄絶な棒術修業の果て、才蔵は生きる力を身に着けていく。 史実を鮮やかに跳躍させ混沌の時代を描き切る、記念碑的歴史小説。 (文庫上巻裏紹介文)

 

市中警護役でありながら裏では強盗も働くならず者の頭目・骨皮道賢、百姓の信頼を集めやがて一揆を主導することになる蓮田兵衛、道賢に拾われた天涯孤独の少年・才蔵。 この3人のアウトローが主人公となります。

 

幕府が弱体化して貧富格差が広がり、百姓たち民衆にとって悲惨なこの時代に風穴をあけるために奮闘する男たちが描かれています。

 

骨皮道賢と蓮田兵衛は実在の人物であり、応仁の乱に向けての史実にきっちり従っていることからは歴史小説なんでしょう。

 

でも、私が一番楽しめたのは剣豪小説としての側面です。

 

蓮田兵衛の太刀筋は、刃先の入力角が刃筋と完全に一致しているため、空気抵抗がなく無音となり、肉を斬り骨を断つ音のみが響き渡るとか。 さらに才蔵が棒術の老師に教えを受けるシーン。 死と隣り合わせの修行のユニークさと壮絶さには絶句しました。

 

修行を終え、心身ともに成長した才蔵が賭け試合で武芸者たちと戦うあたりまでは、すこぶる破天荒な小説として面白く読んでいました。

 

ただ、物語の終盤に一揆が勃発してからは、歴史的事実に忠実になるあまりか、勢いがなくなってしまった感がありますね。 多少史実に反していても、剣豪小説として着地させて欲しかったです。

 

それでも骨太のストーリーを堪能しました。 歴史時代小説がお好きな方にはお勧めです!