吉川英梨さんは、1977年生まれの推理作家・恋愛小説家。 「女性秘匿捜査官・原麻希」シリーズはドラマ化もされているようです。

 

私は読んだことがないばかりか、名前も聞いたことがない作者だったのですが、どなたかのブログで絶賛されていたので、とりあえず読んでみることにしました。

 

家庭を顧みずに仕事に没頭してきた叩き上げの刑事・本城が、警察官僚として出世争いの渦中にいる息子から懇願される。 出向中に詐欺組織に盗まれた警察手帳を内密に奪還してほしいというのだ。

 

親の務めを果たしてこなかった慙愧の念から、息子の隠匿に手を貸すことを決める本城。 手帳に迫る過程で掴んだのは、殺人も厭わない詐欺組織の実態だった。 (文庫裏紹介文)

 

息子の警察手帳を取り戻すために、単身、詐欺グループに潜入する刑事・本城。 そこで目にするオレオレ詐欺の実態がなんともリアルで、衝撃的です。

 

社会の底辺で暮らす人間を勧誘し、「お前らが貧しいのは社会のシステムのせいだ」、「金持ちに搾取されて、銀行に眠る金を再分配するためにオレオレ詐欺がある」という論理でオレオレ詐欺を正当化する。

 

さらに、暴力と報酬で組織の統制をとっていく。 まるでイスラム国のようです。 警察が簡単にオレオレ詐欺グループを壊滅できないのもわかるような気がしました。

 

オレオレ詐欺のリアルな実態描写に加え、それに迫っていく本城刑事の驚くべき行動力でストーリーが弛緩することはありません。 ラストのどんでん返しも決まっています。

 

ただ、巨悪が裁かれずに終わってしまうところが、ちょっと物足らないので、続編を書いて欲しいです。

 

先日読んだ「血の轍」は、迫力満点で、アクの強い警察小説でしたが、この作品も負けていませんね。 インパクトのある警察小説が読んでみたい人にお勧め。