撃てない警官」、「出署せず」、「伴連れ」、に続く柴崎警部シリーズの第4作です。 これまでの3作は連作短編集だったのですが、この作品は長編になっています。

 

前作あたりから、主人公の柴崎警部はもとより、女性署長の坂元、副署長の助川、若手女性刑事・高野、柴崎の妻・雪乃などサブキャラクターも定着してきたので、満を持しての長編化というところでしょうか。

 

一月十日午後九時、未帰宅者の一報を受け柴崎警部は高野朋美巡査らを急行させた。 九歳の女児、笠原未希はどこへ消えたのか?

 

早期保護を目指し指揮を執る綾瀬署署長、坂元真紀。 主導権を奪おうとする警視庁捜査一課。 未解決事件の悪夢に悩まされる千葉県警。 キャリアまでを巻き込んだ事件の捜査の行方――そしてその真相とは。 名手が持てる力の全てを注ぎ込んだ、長篇警察小説。 (文庫裏紹介文)

 

このシリーズは連作短編で慣れてしまっているので、長編だと間延びしないか少し不安ではあったのですが・・・・それは杞憂でした。

 

九歳の女児の行方不明事件を主軸にして、所轄と本庁捜査一課の主導権争い、非協力的な千葉県警など、組織間の軋轢をリアルに描きつつ、事件の真相は二転三転、最後まで目が離せません。

 

相変わらず本庁に戻るかどうかの葛藤を抱えつつ、真面目に事件に向き合う柴崎の姿には好感が持てますし、坂元署長の奮闘、なによりも高野刑事の目覚しい成長には驚かされました。

 

横山作品の綿密なプロット、「隠蔽捜査」での竜崎署長のカッコよさ。 これらに比べると、地味と言わざるを得ませんが、リアルで安定した面白さを持つシリーズ。 これからも追いかけます。