【中古】 消えた魔球 熱血スポーツ漫画はいかにして燃えつきたか / 夏目 房之介 / 新潮社 ...
 
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ブックオフで立ち読みした本です。 「消えた魔球」という漫画を題材にしたエッセイ集で、いきなり大リーグボール1号の解説から始まります。 さらに、2号、3号と作者自身の模写も入れて、実に面白い。 迷わず購入することにしました。
     
作者の夏目房之介さんは、漫画批評家、コラムニストとして有名な方ですが、実は文豪・夏目漱石の孫でもあります。
    
若い頃には、”漱石の孫”というレッテルを重荷に感じていたという夏目さん。 しかし41歳の時の作品であるこのエッセイを読むと、肩の力が抜けたユーモアに溢れていて、そんな重荷からは開放されたことがうかがえます。
   
「巨人の星」「あしたのジョー」「エースをねらえ」「ドカベン」・・・・。 昭和20年代後半から現在にいたる代表的な「スポ根」漫画を素材に、その描線の一本一本を模写。 血と汗と涙にまみれた「スポ根」道の奥義を解明するとともに、ツッコミ容赦なき文章で笑わせる。
     
無謀とも思える誇張表現は? 荒唐無稽な必殺技は? いったい何を物語るのか、大マジメに考察した笑える漫画考現学。 (文庫裏紹介文)
    
     
スポーツ漫画、特に野球漫画を数多く取り上げていますが、「巨人の星」や「ドカベン」、「タッチ」などの名作にも、その魅力は十分に認めたうえで、容赦なくツッコミを入れる。
     
たとえば、「巨人の星」の紹介は、
     
スポ根劇画の元祖大元締めである。 68年にはTVアニメになり、涙腺破損症で眼球発火症の主人公星飛雄馬が”重いコンダラ”をひきずるうちに、その頃物心ついてた人なら誰でも知っている大ヒット劇画になった。
     
素晴らしい! でも、これを読んで笑える人は50歳以上か、スポ根マニアだけでしょうね。
      
また、「アストロ球団」のようなトンデモ漫画に対しては、
     
魔球・秘技の消費量及び消費スピードにおいて、この作品は特筆すべき記念碑的倒産寸前大安売り大バーゲン的漫画である。 とにかく超人であるからたいていのことはどうにでもなるわけで、まだ6人しか揃ってないのに、ロッテと試合をするのである。 バレーボールかおまえらは! とか思わずつっこみたくなってしまう。
    
と、ツッコミも過激になるのですが、なんだかんだと、けなしながらもながらも読んでいるのは作者の漫画への愛なのでしょう。
    
その他、「ちかいの魔球」、「野球狂の詩」、「すすめ!! パイレーツ」、「がんばれ!! タブチくん!!」などの野球漫画から、「サインはV!」、「エースをねらえ!」などの少女スポーツ漫画、「あしたのジョー」、「ハリスの旋風」、「タイガーマスク」、「プロゴルファー猿」、「1・2の三四郎」など野球以外のスポーツ漫画まで、実に50作品近くが紹介されています。
     
川崎のぼる、ちばてつや、水島新司、江口寿史、いしいひさいち、あだち充、吾妻ひでお、永井豪、藤子不二雄、望月あきら、山本鈴美香、小林まこと、バロン吉元などなど、まったく異なるペンタッチを見事に模写しているのも凄いです。
      
1992年の作品で、もう絶版になっているし、読者をかなり限定(特に年齢層(笑))するのでお勧めとは書けませんが、上記の作者や作品を多く読んでいる方なら、中古を探してでも読んで欲しい。 面白さは保証付きです。