オーダーメイド殺人クラブ (集英社文庫)/辻村 深月
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新作が書かれると、ハードカバーで買うにしろ、文庫化を待つにしろ、読まずにはいられないお気に入り作家が何人かいます。 東野圭吾さん、島田荘司さん、井上夢人さん、有川浩さん、池井戸潤さん、原田マハさん、高野和明さんなど。
    
一方、お気に入りだったのに、面白くない作品を読んだため、読まなくなってしまった作家さんもいます。 一作だけならまだしも、二作連続でピンとこないと遠ざかってしまいますね。 真保裕一さん、五十嵐貴久さん、雫井脩介さんなどがそんな感じかなー。
      
そこで、辻村深月さん。 彼女の小説は、繊細かつ濃密な心理描写や終盤の謎解きが好きで、ずっと読んできたのですが、前回、文庫化を待って読んだ「水底フェスタ」 は、正直ガッカリでした。 今回も駄目だと辻村さんから離れてしまいそう・・・・・。
     
「オーダーメイド殺人クラブ」は、「水底フェスタ」と同じ2011年に執筆された作品です。
    
クラスで上位の「リア充」女子グループに属する中学二年生の小林アン。 死や猟奇的なものに惹かれる心を隠し、些細なことで激変する友達との関係に悩んでいる。
    
家や教室に苛立ちと絶望を感じるアンは、冴えない「昆虫系」だが自分と似た美意識を感じる同級生の男子・徳川に、自分自身の殺害を依頼する。 二人が「作る」事件の結末は―。 少年少女の痛切な心理を直木賞作家が丹念に描く、青春小説。(文庫裏紹介文)
    
「水底フェスタ」は、辻村さんらしい繊細さ、温かさ、驚きなどが見られなかった。 それに対してこちらはいかにも辻村さんらしい小説でした。
 
舞台は、長野県にある雪島南中学校の2年3組。 そこで描かれるイジメやハブ(村八分)、スクールカースト(階層)など。 中学生女子の心情をここまで生々しく表現できるのは辻村深月さんしかいないでしょうね。
   
男性の私には理解しきれない部分もあるのですが、辻村さんのキメ細かい心理描写を読んでいると”そうなんだろーなー”と思わされてしまいます。
     
こういう世界から抜け出すために、主人公の小林アンが選んだのは、同級生の男子に自分の殺害を頼むこと。 「私を殺してくれない?」 そういえば、最近起こった三重の女子高生殺人がこのパターンでしたね。
     
そして、2人は綿密な実行計画を練り上げて行く。 徐々に計画が具体化するにしたがって増してくる緊迫感。 この先はネタバレになるので書きませんが、ラストはいかにも辻村さんらしいフィニッシュでした。
     
学園生活の閉塞感とその開放を描いた青春ドラマで、やっぱり辻村作品は面白い! と思わせてくれました。 お気に入り作家リストから外さずにすんだようです。