――――――2015年2月22日投稿―――――2022年3月12日更新――――――

 

フランツ・リストは、1811年生まれのハンガリーの作曲家・ピアニストです。 ハンガリーといっても、リストが生まれた地方はドイツ・オーストリアに支配されており、ドイツ語を話し生活様式もドイツ流だったようです。

 

しかし、リストはハンガリーを祖国と呼び、生涯ハンガリー人としての愛国心を持ち続けました。

 

そんなリストが、ハンガリーの伝統的な音楽を研究し、ハンガリー民謡のメロディを元にして作曲したのがハンガリー狂詩曲。 リストの愛国心の発露・・・・のはずでした。

 

ところが。

 

リストがハンガリー古来の音楽であると信じたものは、実際はその時代に作曲され、ロマ(ジプシー)のバンドが演奏していた曲であったことが後年になって判明しました。

 

残念ながらリストの愛国心は地元ハンガリーで、「ハンガリーの伝統音楽と、放浪民族であるロマ(ジプシー)の音楽と取り違えるのはけしからん!」という声まで上がる結果になったのです。

 

とはいえ、何が元になっていようと、ハンガリー狂詩曲の普遍的な音楽的魅力はいささかも損なわれるものではないでしょう。

 

リストは、最初ピアノ版として19曲のハンガリー狂詩曲を作曲しましたが、その中の6曲を管弦楽に編曲しました。 中でも、美しい楽想がふんだんに盛り込まれた第2番はリストの全作品の中でも1、2を争う人気曲になっています。

 

↓ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で管弦楽版を

 

ピアノ版のハンガリー狂詩曲第2番というと、真っ先に思い浮かぶのがトムとジェリーの「ピアノコンサート」です。 トムの弾くピアノの鍵盤と実際の音がぴったり一致しているのが凄い!

 

↓アカデミー賞短編アニメ賞受賞の名作です

 

 

1937年のアメリカ映画。 失業中のトロンボーン奏者を父に持つ美声の少女が、100人もの失業楽士によるオーケストラを結成。 ストコフスキーを指揮者にカーネギー・ホールでの公演を演奏させるまでの奮闘を描いた涙と笑いの作品です。

    

当時15歳だったディアナ・ダービンの初々しい演技と素晴らしい美声がとても印象的で、大好きな映画です。 ハンガリー狂詩曲は、ストコフスキーに失業楽団の指揮者を引き受けさせる重要な場面で演奏されます。

 

ハートウォーミングな音楽映画としては不朽の名作。 まだ観たことがない方は、是非一度ご覧になってくださいね。

 

アンタル・ドラティ指揮/ロンドン交響楽団

こういったリズミカルで舞曲的な音楽では、ドラティの切れ味鋭く明快な指揮がよく合っています。 管弦楽版6曲が収録され、60年代と思えない鮮明な録音も魅力です。

 

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
2番、4番、5番が収録されています。 第2番はミュラー=ベルクハウス編曲版のせいかもしれませんが、ドラティ盤の9分41秒に比べて13分41秒と4分も長い。 カラヤンの指揮も、壮大なスケール感が感じられます。