ラバー・ソウル (講談社文庫)/井上 夢人
¥1,058
Amazon.co.jp
     
井上夢人さんの最新作が文庫化されたので、読みました。 これで井上さんの作品は全作品読破! といっても寡作なので全部で14冊しかでておらず、追っかけやすいですね。
    
これが、東野圭吾さんあたりになると、80冊以上出ているので、全作品読破はファンと言えども。なかなか苦しいものがあります。
       
幼い頃から友だちがいたことはなかった。 両親からも顔をそむけられていた。 36年間女性にも無縁だった。 何度も自殺を試みた――そんな鈴木誠と社会の唯一の繋がりは、洋楽専門誌でのマニアをも唸らせるビートルズ評論だった。
    
その撮影で、鈴木は美しきモデル、美縞絵里と出会う。 心が震える、衝撃のサスペンス。 (文庫裏紹介文)
 
幼少の頃の病気と整形手術の失敗から、誰もが顔をそむけるような醜い要望となった鈴木誠。 そんな彼が、美しい女性と出会い、惹かれて行く。
    
そしてそれがエスカレートしていって・・・・という、かなり直線的なストーリーで進行しますが、井上さんの筆致は抜群のリーダビリティーで、このボリュームある小説をぐいぐい読まされていきます。
      
そして終盤に悲劇が起こってしまうのですが・・・・・
      
あれ?
    
ここで読者はなんともいえない違和感を味わうことになるでしょう。 そして、物語の全貌が見えたとき、切なさで胸が苦しくなると思います。
      
「ラバー・ソウル」という題名はビートルズのアルバムタイトルであり、目次がレコードのA面B面に分かれているところは、乾くるみさんの「イニシエーション・ラブ」を思わせます。 ラストで、どんでん返しがあるのも似ています。 ただ、驚きの大きさでは、「イニシエーション・ラブ」が上回りますね。
   
また、ミステリーと人間ドラマの両立という点で、東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」から受ける感動にはちょっと及ばないかな。
       
しかし、逆に言うと「イニシエーション・ラブ」、「容疑者Xの献身」という大傑作に迫る作品だということも出来るでしょう。 井上作品としても屈指の完成度だと思います。  お勧め。