モーツァルトの最後のピアノ・ソナタである第18番 K.576は、1789年、モーツァルトが亡くなる2年前に作曲されています。
この頃は、ウィーンでの成功も過去のものとなり、生活は困窮を極めていました。 そこでモーツァルトは、ベルリンのプロイセン王・ヴィルヘルム2世に謁見し、お抱え作曲家としての地位を得ようとドイツに旅立ったのでした。
この時、ヴィルヘルム2世から、6曲の弦楽四重奏曲と長女・フリーデリケ王女のためにやさしいピアノソナタを6曲の作曲を依頼されたとのモーツァルトの手紙が残されています。
最終的には、弦楽四重奏曲は3曲、ピアノ・ソナタは1曲しか書かれませんでした。 それがこの曲だと言うのが長い間の通説です。(Wikiなどもそのように解説されています)
しかし最近になって、この説は疑問視されるようになってきました。
ひとつは、王女のための”平易な”ピアノ・ソナタという依頼に対して、この曲がモーツァルトのピアノ・ソナタの中でも最も演奏が難しい曲であるという矛盾。
さらには、すべての曲を作曲して王に献呈すれば、すぐさま金になることはわかっていながら途中で作曲をやめてしまったこと。 モーツァルトなら素人向けの12曲など簡単なはずなのに・・・・
実は、モーツァルトがヴィルヘルム2世に謁見したという記録はどこにも残っていません。 するとモーツァルトの手紙は嘘を書いているのではないかという疑いが出てきます。
結局、モーツァルトはヴィルヘルム2世への謁見がかなわなかったのではないか? 手紙は、手ぶらでウィーンに戻らざるを得なかったモーツァルトが、妻や借金主たちの怒りをかわすために苦し紛れに書いたものなのではないか?・・・・・・
そう考えるとちょっと悲しくなりますね。
のだめでは、ヨーロッパ編後編で登場。 のだめがお城での初リサイタルで弾いた曲です。 千秋が曲と演奏の解説をしてくれてます。
千秋: ピアノソナタ第18番。 モーツァルトの最後のピアノ・ソナタ。 バッハを思わせるバロック的な対位法。 難解な曲。 普通違う旋律が出てくるだろう所で、第1主題と同じものが。 やっと違う旋律が出てきたと思えばすぐに消え、どうすんだ? と惑わせておいてあっさりまとめる。 そのバランス感覚。 モーツァルトって理論でどうこういえる相手じゃないんだな。 あいつはそこまでわかって弾いている。
千秋も言っているように、この曲にはバッハの影響が色濃く現れていて、バッハの平均律クラヴィーアと聴き比べると一目瞭然、いや一聴瞭然です。
モーツァルトのピアノ・ソナタ第18番 K.576 → ♪
バッハの平均律クラヴィーア曲集第2巻第5番ニ長調 BWV874 → ♪
ドイツ旅行の途中でモーツァルトはライプティッヒの聖トーマス教会を訪れ、バッハの音楽に改めて大きな影響を受けています。
このピアノソナタは、王女のための平易なピアノ曲というよりも、偉大な先駆者であるバッハに対する尊敬から生み出されたものと考えて間違いないのでしょう。
Mozart the piano sonatas/Maria Joao Pires
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マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ)
ピリスのモーツァルト・ピアノソナタ全集からの演奏です。 この人のタッチは粒立ちが良くて本当に美しいですね。 陰影豊かな表現と優秀な録音もあって、文句なしの盤だと思います。
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- ワルター・クリーン(ピアノ)
- ブログ仲間のタケさんから教えていただいたCDです。 1964年の録音とは思えないような美しいピアノの響き。 丁寧なピリスの演奏に比べると、一層伸びやかで自然な流れを感じます。 11番から18番まで8曲入って1,200円は破格の安さです。