竜の涙 ばんざい屋の夜 (祥伝社文庫)/柴田 よしき
¥590
Amazon.co.jp
      
東京・丸の内の片隅にある、京都庶民料理の”おばんざい”が売り物の「ばんざい屋」を舞台に、女将と客たちの人間模様を描いた連作短編。 「ふたたびの虹」 に続くシリーズ2作目です。
       
「ふたたびの虹」は、温かで心地よいミステリーで、私が大好きな作品です。 それから約10年ぶりに書かれたのがこの「竜の涙」。 続編が読めるとは思っていなかったので、嬉しい驚きでした。
 
「竜の涙」を飲んだことがありますか? 都会の片隅で今夜もそっとカウンターに置かれる一皿、一杯。 迷子になったり傷ついたり、意固地になったり独りぼっちになった彼女たちの心に、そっと染みるふうわりとしたお出汁の香。
     
ヒット作『ふたたびの虹』で人々を癒した女将の包丁の音が、ことこと今宵もまな板で鳴って、ばんざい屋の夜が始まる・・・・・・・人気シリーズ第二弾。(文庫裏紹介文)
 
『竜の涙』、『霧のおりてゆくところ』、『気の弱い脅迫者』、『届かなかったもの』、『氷雨と大根』、『お願いクッキー』の6編から成る連作短編です。
    
「ふたたびの虹」は、謎解きの妙、人情の温かさ、季節感溢れる料理、という3拍子がそろった傑作だったんですが、この作品ではミステリーの要素はかなり少なくなっています。 ミステリーらしいのは『気の弱い脅迫者』だけで、その点ではちょっと物足りないかな。
    
しかし、このシリーズ独特の心地よく温かい味わいは健在。 今回は、広告代理店に勤める3人の女性が全編にわたって登場しますが、彼女たちが人生の転機に、どう向き合い決断していくかが読みどころです。
     
そして、各編で登場する料理は相変わらず美味しそうで、謎解きに注意が向かない分、かえってゆっくり楽しめるかも(笑) 栗ご飯に黒豆ご飯、黒豆で作ったチーズケーキ風和菓子、ブリ大根、柚子味噌大根、身欠きニシンの甘露煮などなど・・・・・ 書いてたらお腹すいてきました(笑)
      
さらに続編が出るかどうか分かりませんが、次は女将自身の物語を期待したいです。