僕たちの戦争 (双葉文庫)/荻原 浩
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前回に引き続き、太平洋戦争をテーマにした小説。 今回は荻原浩さんの「僕たちの戦争」です。
     
主人公は、現代に生きるフリーターでサーファーの尾島健太と、敗戦直前の1944年に生きる予科練Cの石庭吾一。 同じ19歳で姿かたちもそっくりな2人が、タイムスリップによって入れ替わってしまうのです。
     
健太は最初何が起こったのか理解できず、ドッキリカメラだと思い込もうとします。 吾一のほうは、現代日本に氾濫するアルファベットや女性たちの茶髪、服装を見て仰天します。 ここは敵国なのか?
     
このあたりは、荻原さんらしいコメディタッチで楽しめますが、健太は石庭吾一として予科練に連れ戻され、厳しいシゴキに直面。 さらに特攻隊に任命されてしまいます。 一方、吾一は日本が戦争に負けたことを知り愕然とします。
       
バイトも満足に続かないような今時の若者が、終戦間近の軍隊でどんな風に生きていくのか?
国のために散ろうと決めていた青年が、現代日本を見て何を思い、どう順応していくのか?
2人は、はたして元の時代に戻ることができるのか?
    
 
というストーリーです。 戦争物の小説なんですが、タイムスリップという現象による先の読めない展開に、おもわず惹きこまれます。
     
健太のパートでのタイムパラドックス的興味や、吾一の目から見た現代日本の歪みなど読みどころ満載で飽きさせません。
    
そして、最後に2人の主人公が行った選択は・・・・・・哀しい。
      
ラストは、初読の時は少し物足りなく感じたのですが、今回再読して、むしろ清々しい。 それでいて余韻の残る素晴らしいラストだと思いました。
      
戦争の哀しさを描きつつもエンターテインメントとしても面白い。 荻原作品では「明日の記憶」 とともに傑作だと思います。 お勧め。