――2013年5月11日投稿―――2024年9月28日更新――

 

サミュエル・バーバー(1910-1981)は、20世紀アメリカの作曲家ですが、現代音楽全盛の時代にあって、伝統的な形式を重んじ、ロマン主義的な豊かな旋律を備えた作品を残しました。

 

代表作の「弦楽のためのアダージョ」は、もともとは弦楽四重奏曲の第2楽章だったのを弦楽合奏用に編曲したもので、ジョン・F・ケネディの葬儀に用いられて広く知られるようになりました。

 

そのため、訃報や葬送で使われることが多くなり、バーバー自身は「葬式のために作った曲ではない」と不満を述べたそうですが、その後も9.11同時多発テロ慰霊祭など、葬送の曲の定番のようになっています。

 

曲は、深い悲しみに満ちた旋律が静かに流れて開始されます。 静かで荘厳な雰囲気が徐々に高潮していき、慟哭のようなクライマックスで突然もたらされる静寂(全休符)が非常に印象的です。 その後、静けさが戻り、追憶に浸るように終わります。

 

↓10分足らずの短い曲なので是非聴いてみて下さい

 

↓こちらは作曲者自身が編曲した合唱曲版。 さらに敬虔な感じがします

 

 

「のだめ」では、ドラマ第8話に登場。 のだめが千秋の飛行機恐怖症を治すため、催眠術を掛けるシーンに流れます。 全編で最も重要なシーンの一つと言ってもいいでしょう。

 

催眠術によって封印された、悲しい飛行機事故の記憶を思い出す千秋。 涙を流す千秋の手を取り、のだめは優しく語り掛けます。

 

のだめ: 「先輩のせいじゃないですよ。 先輩は子供で・・・じゃなくても、きっと誰にもどうにも出来なかったんです。 もういいんですよ」

 

タイマーをセットするのだめ。 そして、外が明るくなってきて夜が明けます。

 

のだめ: 「神様が呼んでるから、行かなきゃ」

 

部屋に戻ったのだめは、コンクールの課題曲の楽譜を開きます。 千秋が海外に出てしまうのを承知で飛行機恐怖症を治したのだめ。 千秋を追いかけるためには自分が海外に行くしかないのです。 のだめの心情を表す祈りのような音楽。
 

のだめ: 「タイマーが鳴ったら、目を開けてください。 目を開けると、目を閉じていたとき体験したことや、話したことはすべて忘れてしまいます。 大丈夫、先輩はもう飛行機に乗れます」

 

タイマーが”0”になった瞬間におとずれる静寂(全休符)。 素晴らしい演出でした。

 

 

サー・ネヴィル・マリナー指揮/アカデミー室内管弦楽団

このコンビの演奏はいつもスタイリッシュで品がいいですね。 弦楽のためのアダージョも、悲痛な慟哭という部分は薄いんですが、格調の高さを感じます。

 

このアルバムは、バーバーの管弦楽作品を集めたアルバムで、弦楽のためのアダージョ以外に、チェロ協奏曲とバレエ組曲「メディア」が収められています。 バーバーに興味を持った方は聴いてみてください。 演奏のレベルは高いです。