隻眼の少女 (文春文庫)/文藝春秋
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麻耶雄嵩さんは、1969年生まれのミステリー作家。 綾辻行人さんや法月綸太郎さんと同じく、京都大学の推理小説研究会に所属、在学中の1991年にデビューしました。
    
いわゆる「新本格」の作家なのですが、綾辻・法月よりもさらに先端的な作風で、「夏と冬の奏鳴曲」などは本格ミステリーの構造自体を自ら破壊するような強烈な作品でした。
    
この「隻眼の少女」は、2010年に刊行された作品。 これまでミステリーマニアの間では評価が高い割りに、賞とは無縁だった麻耶さんが、日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞をダブル受賞した作品ということで、文庫化されたのを機に読んでみることにしました。
 
山深き寒村で、大学生の種田静馬は、少女の首切り事件に巻き込まれる。 犯人と疑われた静馬を見事な推理で救ったのは、隻眼の少女探偵・御陵みかげ。 静馬はみかげとともに連続殺人事件を解決するが、18年後に再び惨劇が・・・・ (文庫裏より)
 
「翼ある闇」と「夏と冬の奏鳴曲」というデビュー1,2作を読んで強い印象を受けたものの、あまりにマニアックな作品世界に、しばらく彼の作品から遠ざかっていたんですが、3年ほど前に読んだ「蛍」はノーマルな(笑)本格で非常によかった。
     
この作品も、水干をまとった隻眼の美少女探偵というのがちょっと奇抜ですが、本格ミステリーとしての構造は破綻させず、精緻でロジカルな推理が展開されます。 連続するどんでん返しと、最後に思わぬ方向からやってくる真相。 久々に本格ミステリの醍醐味を味わいました。
    
ただ、ラストがあまりにも明るく軽い感じで終わるので、読み終えてしばらくすると、これって本当に解決されたんだろうか? さらに奥に隠された真相があるんじゃないか・・・などと思ってしまいました。
   
まあ、麻耶雄嵩作品だからこその感想かもしれませんが。
     
本格ミステリーファンはもちろん、ミステリ初心者にも面白く読める佳作だと思います。