―――2012年9月9日投稿―――2024年2月18日更新――――
1804年、ベートーヴェン34歳の時の作品で、ハイドンやモーツァルトの影響を引きずっていた第1、第2交響曲から大きく飛躍し、これまでの常識を覆すベートーヴェン独自の交響曲です。
それまでの交響曲は20~30分程度の長さのものが主流だったのですが、この曲ではほぼ倍の長さを持つ、まさに気宇壮大な記念碑的作品でした。
ベートーヴェンは、この曲を尊敬するナポレオンに献呈するつもりで作曲しました。 しかし、ナポレオンが革命の英雄から一転して皇帝に即位したことに腹をたてて、献呈をとりやめてしまったというのは有名な逸話です。
ただ最近の研究では、献呈をとりやめたのは事実であるものの、ナポレオンに激怒してというのは誤りで、第2楽章の葬送行進曲がナポレオンに対して失礼であると考え、献呈を取り消したという説もあります。 まあ、真実は歴史の闇の中ですね。
第1楽章: ソナタ形式
力強い和音が2回鳴り響き、チェロが有名な「英雄」のテーマを奏でます。 特に注目すべきは展開部で、ベートーヴェンがその本領を発揮した壮大なものです。
第2楽章: 葬送行進曲
単独でも演奏される有名な葬送行進曲です。 静かに開始され、徐々に高まっていく悲しみの感情が痛切。 この音楽です↓
第3楽章: スケルツォ
拍を刻むようなような動機で開始され、中間部のトリオは、ホルンによって伸びやかに奏され、明るい雰囲気を持っています。
第4楽章: 変奏曲
この壮大な曲の締めくくりにベートーヴェンは自らが得意としていた変奏曲を持ってきます。 これは極めて異例なことでしたが、充実した変奏曲は見事に全曲を締めくくっています。
↓全曲をエストラーダ指揮/フランクフルト放送交響楽団の演奏で
「のだめ」の原作では、Sオケの初コンサートが第7ではなくこの曲になっていますね。 始めは、第7をやってたんですが、なぜか途中から英雄になった。(これ謎です(^_^;))
ドラマでは、第3話で千秋、のだめ、峰、真澄の面々が、大学に出て来なくなったコントラバス奏者・佐久桜の家を訪ねます。
坂を登って現れたのは、ものすごい大邸宅。 ここで流れる音楽が交響曲第3番「英雄」の第4楽章冒頭です。 この音楽ですね↓
ピエール・モントゥー指揮/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
モントゥーの演奏は中庸な中に温かみとエレガントな気品があって大好きです。 この演奏も作為のない淡々とした運びのうちに、ニュアンス溢れるフレージングや、ホッと心温まる瞬間が感じられます。
ルドルフ・ケンペ指揮/ミュンヘン交響楽団
重厚な低域群をベースにした、ゆったりしたテンポの揺るぎない構造。 いかにもドイツ人による正統的かつ壮大なベートーヴェンです。
エリオット・ガーディナー指揮/レヴォリュシオネル・エ・ロマンティク
古楽器によるスピード感に溢れた演奏。 それでいてガーディナーの指揮が無機的にならず生き生きとしているのがいいですね。 颯爽としたカッコよさでは一番かな。