――2012年7月8日投稿―――2024年4月5日更新――

 

モーツァルトの全作品の中で、いや、クラシックの全楽曲の中でも最も有名な曲の1つでしょう。 

 

第1楽章冒頭のメロディは、日頃クラシックを聴かない人でも、どこかで聴いたことがあるはずです。 シルヴィ・ヴァルタンが「哀しみのシンフォニー」という名でポップスにもカバーしていました。

 

この曲を書いた当時のモーツァルトは、オペラ「フィガロの結婚」や「ドン・ジョヴァンニ」の成功によって、作曲家としての活動はピークにありました。

 

ところが、一方で経済的には大変苦しい状況にあり、当時は ”明日の食費を稼ぐため” 次々と予約演奏会なるものを開き、そのためハイペースで作曲をするしかありませんでした。

 

ブラームスは交響曲第1番を作曲するのに20年をついやしましたが、モーツァルトは、この曲を含めた「3大交響曲」と呼ばれる3曲をわずか2ヶ月足らずの間に作曲しています。

 

1つの交響曲を2~3週間で書き上げるのですから、推敲もなにもありません。 まさしく、頭の中にある音楽をそのまま譜面に書き写すだけという表現がピッタリだったのでしょう。

 

さらに物凄いのは、優美で穏やかな39番、悲劇性と甘美さが同居する40番、豪華絢爛でスケールの大きな41番と、この3曲の性格がまったく異なることです。 天才と表現するしかないエピソードですね。

 

↓有名な第1楽章を、ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズの演奏で

 

のだめでは第6話、Sオケ解散飲み会の後、みんなでゲームセンターにいきますが、そのときのBGMとして流れています。 Sオケのダーティーペア、玉木と橋本が千秋に恥をかかせようと、太鼓の達人をやらせようとします。

 

「みんなー。 千秋が太鼓たたくぞー。 集合、集合」

   

「ふ、ふ、ふ、変なポーズで太鼓をたたいて、夢見がちの音大のお嬢様たちの思い出と言う白いハンカチに一滴の黒い染みを残すんだ」

 

というシーンですね。 ここでなぜ交響曲第40番なのか、ちょっと意味不明でしたが・・・(笑)

 

↓エストラーダ指揮/フランクフルト放響で全曲を

 

 

ジョージ・セル指揮/クリーヴランド管弦楽団

このコンビは、完璧なアンサンブルを誇る反面、無機的で冷たいという評がありますが、このモーツァルトを聴くとそれがまったく的外れであることがわかるでしょう。 端正な音楽の中に微妙に揺れるテンポが悲しみと抑制されたロマンを演出します。 私の最も好きな盤です。
 

ブルーノ・ワルター指揮/コロンビア交響楽団

豊穣な歌に満ち溢れたロマンティックな演奏で、第1楽章の絶妙なルフト・パウゼ(楽譜にない休止)、緩徐楽章の甘美なカンタービレなど、「歴史的名盤」と呼ばれるにふさわしい演奏だと思います。
 

ニコラウス・アーノンクール指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

モダン楽器を用いながら古楽器的な演奏で当時(1983年録音)かなり話題になりました。 第1楽章からテンポが速く、非常に鋭角的な演奏です。 強弱の大きいコントラスト、たたみかけるようなフレージングなど聴いていて新鮮ですが、ちょっと疲れます。
 

ラファエル・クーベリック指揮/バイエルン放送交響楽団

ゆったりとしたテンポで自然でオーソドックスな演奏。 オケの響きも透明で美しく、隅々まで神経が行き届いています。 この曲の入門用としては一番ふさわしいかもしれません。