『連弾』、『人格者』、『残奏』に続く、音楽隊採用刑事・鳴海桜子シリーズの第4作。
抜群の音楽能力と刑事能力を持つ一方、相貌失認で食い意地が張っていて、酒乱というユニークな女性刑事・鳴海桜子と、桜子をサポートする刑事・音喜多弦のコンビが活躍するシリーズです。
ヴァイオリン教室に通う児童が白昼、忽然と消えた。 児童が有名企業の社長令嬢であるため、警視庁は誘拐事件と判断、捜査本部を設置。 音楽隊志望の鳴海桜子刑事と、捜査一課の音喜多弦も捜査を開始する。
誘拐現場と容疑者の特定に成功し、表舞台から消えた音楽家を追う二人。 だがそれは、別の犯罪と、桜子の父へと繋がり―。 (文庫裏紹介文)
ヴァイオリン教室に通う小学生の少女が誘拐されます。 鳴海桜子は、ささいな手掛かりから犯人はヴァイオリニストであることを指摘。 冒頭からさすがの推理力を発揮しています。
誘拐された少女は小学五年生にして、コンクールに入選するほどの才能を発揮して、ヴァイオリンの先生はプロになることを期待するのですが、それに対する鳴海桜子の言葉が印象に残りました。
「才能を与えられるのは幸運かもしれませんが、才能を生かした道に進むよう強制されるのは不幸だと思います。 それを根拠に人生を規定されるのだとしたら、才能は呪いにしかなりません」
このテーマは非常に興味深く、これをもっと掘り下げて欲しかったですね。 途中まではこのテーマが見え隠れするのですが、中途半端に終わりました。
ミステリ的にも、誘拐犯と少女の会話かと思わせて・・・というのはありましたが、その後の展開は単調でしたね。 前作の『残奏』が良かっただけにちょっと期待外れでした。
それでも、捜査一課へと誘われた鳴海桜子の決断は? 音喜多弦の別れた妻・娘との関係は? などシリーズの今後を見守りたいと思います。
