第4章「作品」第2節「俳句」…冬 | 獏井獏山のブログ

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「冬」

 

1年暮れて 年明けにけり 欠伸の間

 

2お降りや 神がかる水 何の色

 

3凩のドッと吹き来て 地をあふつ

 

4大楠に 四方の木枯し 吹き集う

 

5木枯しの 吹き溜りたる 小駅かな

 

6釣竿を 納めし後の 寒さ哉

 

7走る子の 転びて泣ける 寒さ哉

 

8寂しさの 極みに炭を つぎにけり

 

9白銀の 山迫り来て 傾なり

 

10死の寸前 凍てる舗道を 駆る車群

 

11冬眠の 蛙は鍬に 切られけり

 

12寒灯の 雨にチカチカして 寂し

 

13初空を 仰ぎて心 新たなり

 

14四辻に 出て風はあり 年の市

 

15親しみて 吾も 焚火の 人となる

 

16釣人の 空見上げたる 時雨かな

 

17団地ビル 聳え 近くに 冬日伏す

 

18飛火野の 時雨れて鹿の子 親に付く

 

19冬の月 斯くまで澄むに 息止めり

 

20寒風に 殊更 鳩の 群れを成し

 

21城の様 画然として 冬の月

 

22初雀 蝶の如くに 愛しけて

 

23氏神へ 向かう車に 初明り

 

24初明り して顔のある 人と会い

 

25乗り初めの タイヤの音を 確と聞く

 

26わが胸に 北風吹けど 毛も散らず

 

27我が心 枯葉の如く 吹かれおり

 

28我が家にも この季節来ぬ 柚湯かな

 

29短日や なすことも無く 暮れ初めぬ

 

30猩々が 年酒を猪口に 二三杯

 

31火気の暖 部屋に亘れば 人満てり

 

32ストーブの 炎となりし 白灯油

 

33寒風に 吟詠の声 途切れがち

 

34鳶工ら 談笑止めず 朝焚火

 

35機関車が 吐息ついてる 朝寒に

 

36朝寒の 池堤に吟ず 李白の詩

 

37第五聴き 木枯し 涛の 如くなり

 

38除夜の鐘 テレビに映る 法隆寺

 

39闘鶏の 諍う茣蓙や 今朝の春

 

40一羽おれば 闘鶏ゆかし 今朝の春

 

41友逝けり 駅路に厳し 寒の風

 

42我が待てり 出初めのポンプ 水噴くを

 

43出初め式 消防夫みな 真顔なる

 

44出初め式 五色の帯を 天に伸ぶ

 

45初暦 紙音低く 表紙剥ぐ

 

46ダム今も 電気造りつ 雪激し

 

47雪気配 して 大雪の 日となりぬ

 

48ボタン雪 億の白蟻 襲うごと

 

49河内野の 雪や子供の 日となりぬ

 

50雪景色 絵心湧きて 眺めおり

 

51由良港の 師走を漁り 休みおり

 

52雲丹えぐる 由良の媼の 手は紫色

 

53鮮色の 雲丹は紫色の 手でとるもの

 

54雲丹を裂く 手は鉄鋼の 器の如し

 

55大阪は スモッグ深い 冬である

 

56神御座す 社の杜に 人の声

 

57餅棚に 気配のありて 嫁が君

 

58嫁が君 雑煮羨み 伏しにけむ

 

59黒部ダム 脈動しつつ 雪を呑む

 

60雪激し 山小屋(

こや)に人満ち 談亘る

 

 

61漁火も あげず 師走の 海へ漕ぐ

 

62風の道と なりし師走の 淀の水

 

63塵焚いて 今年の事務を 納めけり

 

64高窓の 燃ゆるが如く 大焚火

 

65冬ざれの 星屑 吾に 従えり

 

66大雪や 河内野 天地 無きまでに

 

67初雪に 昨日の風も おさまりぬ

 

68訪れを 待ちし初雪 庭に降る

 

69静かなる 声の聞こえて 外は雪

 

70じんじんと 耳鳴りのして 外は雪

 

71米を蒸す 良き香の満ちて 寒造り

 

72鳥四五羽 遊べる窓の 初明り

 

73鉢梅の 庭に香のある 寒造り

 

74山茶花や 佐野の里なる 酒造り

 

75己が身を 責めし醪の 小言かな

 

76冬日漏れ 圧搾機いま 酒しぼる

 

77釈迦像に 冬日も映ゆれ 中山寺

 

78同志らの 激論果てず 暖炉燃ゆ

 

79ストーブの 暖ようやくに 句座盛ん

 

80事務納め 式終えてなお 談笑す

 

81青木の実 雀は庭に 群れ遊ぶ

 

83黒々と 貨車押し詰めて ヤード冷ゆ

 

84洗車終え 倉庫の三和土 凍て初むる

 

85群雀 飛び立つ溝の 初氷

 

86草焼いて 池堤再び 道を成し

 

87星屑を 撒き散らしつつ 野火盛ん

 

88梅咲くと 頻りに野釣り 恋しけり

 

89焼け進む 野火囃しつつ 進むなり

 

90古寺の 軒の滴り 雪解くる

 

91払わずに 妻捨ておきし 下駄の雪

 

92降る雪の 綾織成して 吹雪くなり

 

93銀粉の 絵のごと雪の 法隆寺

 

94汽車走る 行けども果てぬ 雪の野を

 

95車窓より 見れば降る雪 乱舞せる

 

96一本の 雪の丸橋 渡りけり

 

97吹雪く朝 奈良を出でしに 京晴れる

 

98春日野は 雪に没して 失せにけり

 

99笑みすれば 歯白き 帰り スキー人

 

100なだらかな 坂緩やかに 雪解水

 

101街屋根に 接する如く 鷲飛べる

 

102飛翔せる 鷲近付けば 飛機のごと

 

103風花や 子等の群声 過ぎ行けり

 

103御社の 庭敷く雪を 踏み初めし

 

104大屋根の 雪塊崩れる 音すなり

 

105朝の陽に 光るは鉄軌 雪の原

 

106傘内の 少女吹雪かれ 髪長し

 

107ストーブの 暖良き位置は 吾子の座に

 

108降り止んで 空明るむに 雪起こし

 

109残雪の 所々や 土の上

 

110公園に 人群れ 小春 日の匂い

 

111暖冬や 話ははずむ 去年(の雪

 

 

112雨となり 一宇の氷柱 融け競う

 

113北国や 裏庭ごとの 残り雪

 

114雪の間に 疎水 一層 澄む見ゆる

 

115 山焼けるらし 黄昏の 雲明り

 

116壁打って 冬を名残りの 風雨かな

 

117陸橋の 融雪の水 射て強し

 

118枝振りの ままに添い積む 粉ん雪

 

119大野へと 雪の深みへ 汽車進む

 

120雪覆う ホーム 特急 夙に過ぐ

 

121降り止んで また小降りして 大雪に

 

122雪に伏す 土地改良の クレーン車

 

123汽車進む 刻々と雪 大降りに

 

1

24

翌檜

あすなろの 雪の花こそ わたの山

 

 

125幾重にも 雪山に添う 翌檜

 

126雪の山 こそ迫るもの 汽車走る

 

127雪国や 稀に照る日も 雲を漉す

 

128両脇の 融雪水の 音の良さ

 

129奥越や 雪降る中の 立ち話

 

130奥越に 来て 降る雪を 畏れざる

 

131舞い舞いし 雪 傘内の 鼻に積む

 

132雪霽れて 雪嶺近く 日の当たる

 

133雪原に 光りて黒き 川と道

 

134野を駆けて 綿虫飛べる 車窓いま

 

135根雪置く 山に翌檜 林立す

 

136一つ置く 石には一つ 雪の帽

 

137進むとも 見えで雪原 老の行く

 

138バス走る 大雪原に 道ありて

 

139オーバーの 生地を通して 寒迫る

 

140大粒の 雪降り積もる 様を見る

 

141真向(まっこう)の 吹雪 吾 ()に返さるる

 

142こごまりて 歩む (

あられ)の ()を傘に

 

 

143だだっ広い 湿田を雪が 隠したよ

 

144谷急に 斑雪も 流れ形せる

 

145客室の 隅にひっそり 雪柳

 

146み吉野の 山を深みと 時雨れるか

 

147冬紅葉 せし頃知りし 人を待つ

 

148籤売るを 生業にして 木の葉髪

 

149謂うなれば ロマンスグレー 木の葉髪

 

150雲湧いて 動かぬ一日 十二月

 

151一心に 雪の白きを 漁る犬

 

152下向いて 自転車踏めば 虎落

がりぶえ

 

 

)

 

153雪しまき 中を来るなり 郵便夫

 

154雪の道 踏めば 一足づつ軋む

 

155母一人 味噌造りいる 夜の廚

 

156薯植ふや 金剛麓 灯り初む

 

             (完)