追⑤「大掃除の楽しみ」 | 獏井獏山のブログ

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・昔、河内ではお盆準備の1つに大掃除があった。この日に限っては箪笥・水屋などの家財道具、襖・障子などの建具、その他、目に付く物は残らず裏庭や前の道路に運び出し、畳も外して日の当たる場所に立て掛け、床板まで外して、先ずは「床下の溜ったゴミ」を掃いて綺麗にする。これが一番の大仕事だ。床下と雖も1年経つと上がり框の隙間とか、空気孔から微塵が入り込んで結構埃が溜まるのだ。また床板の損耗程度も毎年見ておく必要がある。床下を掃き終え、雑巾で拭いた床板を張り終えると次は、畳叩きが始まる。他家でもこの時期は好天日を選んで大掃除を行うので、「パン、パン」と畳を叩く音が彼方此方から聞こえてくる。…約30枚の畳は家族で手分けして「一枚2人組」になって一斉に叩くのだ。その時点で全員が汗まみれになる。このため、叩いた畳を敷き終えて、家具の後側を雑巾掛けしたり元の位置へ搬入するのは、寧ろ息抜きのようなゆったりとした気分で行い誰彼となく声を出し、笑い声も聞こえるようになる。

 大掃除を終えて手を洗うと、汚れた着衣を着替える前に大きな楽しみが待っている。「西瓜」である。

・西瓜は何処の家でも「夏季を通して食べる果物(野菜)」というのが常識だった。村の中にはそうしない家も偶にあるが殆どの家ではそうなっていた。7月、或いは8月の初め頃になると隣村にある「西瓜農家」までリヤカーを引いて行き数十個の西瓜を買い入れて納屋などの空き部屋に保管し、1日か2日に1個を井戸で冷やして食べるのである。

 特に、大掃除の日には大きい西瓜を1個、時には2個冷やしておいて、概ね大掃除を終えた段階で、西瓜切包丁で切られた8分の1の西瓜に食い付くことになる。この時ほど美味い西瓜はなく大満足を味わう食べ物もなかった。思い出すだけでゴクリと唾を飲み込んでしまう。

 それが終ると、我が家の場合、女連中は着衣を脱いで風呂場などで身体を洗い流すが、男は着の身着のままで村外れの溜池で一泳ぎするのが通例になっていた。

 …この様に「大掃除」はしんどくもあり楽しくもある年中行事だった。