買い物をするために、ちょっとロングドライブに出かけた。私は、昔、医薬品メーカーで営業をしていた。今日、訪れたのは会社時代の最初の担当地である。

 私は、この地域の病・医院を入社から昭和の終わりまで担当した。その間、主な病・医院では代替わりはなかった。亡くなられた先生もおられなかった。

 しかし、病気になられた先生は二人おられた。

 まず一人は、N先生である。先生は近くの大病院に入院されたため、私はお見舞いに伺った。

 ただ、後で言われたのだが・・・。

 「医者と言うものは、人には弱った姿を見られたくないものだ。」

 一方、先生が入院されている間、息子さんが代診され、処方ががらっと変わってしまった。先生が病気をされた以上、後継の事を考えるのは当然である。そのため、先生が帰って来られても、息子さんの処方は尊重された。

 その事は、新薬が少なかった我社には大きな痛手であった。そしてバカ課長事件が起きるのであるが・・・。

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 もう一人の先生がS先生であった。脳内出血で倒れられて院長職を辞された。(ちなみに、私と次の院長が合わなかったため、処方量が減った。)

 S先生の自宅には数回、お見舞いに伺った。

 おそらくは・・・。先生が第一線を退かれた後は、医薬品のメーカーも卸セールスも、誰も訪問することはなかっただろう。医者は、引退すると、商売相手ではなくなってしまう。

 しかし、お世話になった先生だから・・・。私には、そんな気持ちが強かった。

 その後、私は転勤を申し渡される。急な転勤であったため、先生には、最後のご挨拶ができなかった。

 今日、先生の自宅前を車で通った。しかし、20年近く経った今、先生にお会いしに行く勇気がない。むしろ、お亡くなりになっていると言うのが自然なのかもしれない。

 少しばかり、苦い味が口に広がった。