予備校派のための司法試験・予備試験塾 KLOライセンス

予備校派のための司法試験・予備試験塾 KLOライセンス

司法試験や予備試験の情報配信のためのブログです。
本ブログは元々個人が運営しておりましたが、今後、事務的な質問に関しましてはKLOスタッフが回答させていただく場合がございます。

過去の記事のコピーを一部修正したものになりますが、直前期の注意事項をいくつかあげます。

通常、毎年四月に紹介している記事ですが、忘れないうちにあげておきたいと思います。

なお,合格者が100人いれば100通りの合格の仕方がありますので,あくまで1合格者の意見としてお読みください。


①無理をしすぎない
この時期にありがちなのは無理をしすぎて体調やメンタル面を崩すことです。
残り数週間、睡眠時間を削って勉強したころで今の実力が飛躍的に伸びることはありません。
重要なのは今ある100の実力のうち70~80くらいを本番で出せるように体調とメンタルを整えることです。
100ある実力を105にのばしたところで30~50%しか力を発揮できなければ意味がありません。
正直なところ合格者不合格者いずれにおいても、本番で実力の80%以上を出せる人はかなり少ないと思います。
自分も本番では全く納得の行く答案が書けませんでした。それでも普段の勉強でしっかり基礎力がついていれば変な点数は来ません。

おそらく一桁合格のひとでも、自分の答案に納得いっていない部分は必ずあるでしょう。

メンタル面を整えるのも重要です。直前に勉強しすぎたり精神的に追い込み過ぎたりしてうつ状態のようになる人もいます。これは、②③④を実践することや、自分がこれまで勉強した量を思い出したり、出来の良かった答練の答案や添削コメントを何度も読むなどして気を良くし、自分は受かると言い聞かせることなどです。

それと、答練(レック、伊藤塾)で高得点をもらった答案やベタ褒めされた添削コメントだけを何回も読んで本番で書くべき答案をイメージしていました(これは各科目一通は、当日試験場にも持ち込んでいました。本番前に読んで自分の書くべき答案を最終確認しつつ、添削コメントで気を良くして本番に臨むためです。)。


※ただ,逆に本番に追い込みまくる合格者もいますからそれぞれです。受験の1・2年前から合格レベルにある自信のある人は直前に追い込む必要は絶対にありませんが。

合格ラインのレベルは決して高くないということを強く意識してください。

基本をしっかりかいて、「規範→あてはめ」を守る。ウソはかかない。

あてはめは、問題文の事実をピックアップ→自分の言葉で一言評価→「よって、(立てた規範の要件)にあたる(または当たらない)」と述べる。

覚えてきたことをひけらかすのではなく問題文としっかり向き合うこと。

問われていなことについては勝手に書かない(問われていない知識のひけらかしは悪い印象を与えるだけ)。

これを守れば合格できます。

「多くの受検生が気づかない問題点に気づき」、「深い考察力を発揮する」ような試験委員の喜ぶ答案を書こうとする必要はありません。

確実に受かるためには、多くの受験生が気づかない問題点など気づかない方が良いくらいです。

試験委員を楽しませるために答案を書くわけではありません。

試験委員が読んでてつまらない普通の合格答案を淡々と書いてくれば良いです。

皆が気づくことについて、基礎からしっかり書いてくることが肝要です。


②手を広げない
これまでやって来たテキストと過去問、論証集などをひたすら復習するだけで良いです。広げないというよりむしろ狭めるというイメージです。これまでやってないもので手を出しても良いのは過去問系(予備、旧含む)や、基礎確認系の講義やこれまで使用してきた教材に対応した講義等、知識として新しいことは入ってこないものです。知らない知識を与えられる講義は勉強した気にもなり、ウケは良いですが本試験ではよほど力が抜けている人でない限り役立たないと思いますし、下手をすれば問われていない知識のひけらかしに走る危険があります。少なくとも不合格経験者や、とにかく合格を優先したい人は新しいことはやらない方が良いです。ただ、これまで高度な演習書ばかりをやって来た人が、より基礎的な問題に立ち返るのは手を広げることにはなりませんし、書いたことのない旧や予備の過去問を書くというのは良いでしょう。

③一日一通は答案を書く
これからの時期(4月〜)は予備校の答練がありません。一日一通答案を書いて書くスピードや、手のスタミナが落ちないようにしましょう。

④択一は過去問集で
この時期からは過去問集だけで良いです。できれば、これから過去問全てを一度解いておきたいところです。民事系は過去問知識だけで高得点が取れるので必ずやってください。

9割オーバーを狙うような余裕がある人は予備校の問題を潰してもいいですが。

⑤無理に生活リズムを変えない
これは、私や工藤北斗さんが同じ考え方でした。たしか、伊藤真先生も同じようなことを旧試験の前に話していました。

これは夜行性の方なら経験済みかと思いますが夜型の人が急に昼型にしても、昼間眠くて勉強に集中出来ません。数ヶ月とかで直るものでもありません。眠気と戦いながら勉強しても効率が悪いだけなので集中できる時間に勉強すれば良いです。さすがに朝寝て夕方に起きるレベルだと問題ですが、普段お昼くらいに起きる程度なら本番だけ数時間早く起きるくらい問題ないでしょう。体調を崩して落ちてしまう人は例年いますが「夜型だったせいで落ちた」とか、「試験中眠くてしんどかった」なんて人は聞いたことがありません。

簡単にできるなら朝型にした方がいいですが、長年夜型だった受験生が急に変えるのは結構難しいです。

結局のところ、朝型にしないとマズイ!とか、眠れなかったらどうしよう、という焦りこそが不合格要因なのではないかと思います。同じ実力なら絶対に楽観的な人の方が受かりやすいと、最近、多くの受験生を見ていて感じます。そもそも、朝型だろうが夜型だろうが試験前日には緊張で眠れない人すらいます。それでも心配する必要はありません。体調を整えておけば5日間の試験くらい乗り切れますし、本番前日だけ頑張って早起きすればその日は早く眠れます。これから無理に朝型の生活にしなくても良いと思います。本番中はアドレナリンも出ますし眠くなることもないです。答練や模試でも眠くなったことはありません。眠くなる人はそもそも本気じゃないということです。

伊藤真先生がおっしゃるように、栄養ドリンクや睡眠導入剤を用いる場合は本番だけ使うのではなく答練や模試から試しておいてください。私は「カツジン28」というコスパの良い栄養ドリンク(1本500円くらい)を飲んでいまきた。風邪をひいたときもこれを飲むと治ります。3000円のユンケルスターの次くらいに効く感じです。

ちなみに、私の場合、普段は夜型でしたが、前日は軽くお酒を飲んで9時か10時くらいに布団に入り適当な時間に眠れていたと思います。2日目からは疲れているので早く寝れます。普段、お酒を飲んでいる人は試験中も普段と同じで良いと思います。

もちろん,これも生活リズムを昼型にした方がいいという人もいますので人それぞれです。勉強方法も同じですが、ここでも、自分に何が合うのかを考えず合格者一人の意見を鵜呑みにしてしまうことが一番危険です。ここまで書いてきたことも、工藤北斗さん等、他の方と合う意見もありますがあくまで私の意見ですので、自分に合わないと思うことまでここに書いてある通りに無理にやって後悔することは無いようにして下さい。

本日より不定期にBlogに演習問題を掲載していきます。

を同時に私の答案例(再現答案の場合もあります)を載せていきます、

思考経済・再現性の高い答案例作成を心がけておりますので、出来なかった方は写経してみてください。私のゼミ生は150人いましたが昨年までに136人が合格しております、皆さんリベンジ組や中下位ロー生で秀才はだれもいません。予備組も一回は(予備試験を)落ちています、そんな皆さんが多くやられていた勉強法が私の答案の写経でした。

 

 

 

 

 

問題2(旧平成20年度第1問)
甲は、甲の母X、妻乙及び甲の友人の子である大学生丙と共に暮らしていた。日ごろから高齢であるXの介護のため精神的・肉体的に疲れきっていた乙は今の状況から逃れるにはXを殺害するほかないと考え、ある日の夜、殺意をもって、就寝中のXの頭部をゴルフクラブで数回殴打した。Xの悲鳴を聞いて駆けつけた甲は、ゴルフクラブを振 り上げてXを更に殴打しようとしている乙に対し「何をやってんだ。やめないか 」と言いながら、そこに駆けつけた丙と共に乙の行為をやめさせた。Xは頭部から血を流して意識を失っていたものの息があったので、甲は、Xを直ちに 病院に連れて行き 医師の治療を受けさせれば死ぬことはないだろうと考えた そこで、甲は、丙に対し「Xを病院に連れて行くので手伝ってほしい 」と頼み、これを承諾した丙と共にXを甲の車に乗せて病院に向かった。ところが、日ごろから乙に同情していた丙は、Xがこの際死ねばいいと考え、車中で甲に対し、「病院に連れて行って医者から事情を聞かれれば、乙だけではなく、僕たちもやったと疑われますよ。それより、Xを病院の前に降ろして寝かせておきませんか。そうすればだれかがXを見付けて助けてくれますよ 」と提案したところ、甲は、病院の前であればだれかが見付けてくれるだろう からXは死ぬことはないだろうと思い、丙の提案を受け入れた。そこで、甲と丙は、ぐったりしているXを車から降ろして病院の前の路上に寝かせて立ち去り、自宅に一緒に戻った。しかし、丙は、Xが救命されないようにするため、甲に黙って再度病院の前に戻り、Xを人目に付かない植え込みの陰に運び、その場に放置して立ち去った。その後、Xは死亡した。後日判明したところによれば、Xの死因は、治療がなされなかったことによる失血死であった。
甲、乙及び丙の罪責を論ぜよ(ただし、特別法違反の点は除く 。)

 

 

 

【答案例・相当因果関係説・内藤再現答案法務省A】(危険の現実化は優秀答案参照)

第1 乙の罪責

 乙が、Xの頭部をゴルフクラブで数回殴打した行為につき、殺人罪(199条)が成立しないか。

1 まず、ゴルフクラブという極めて固い鈍器で、身体の枢要部である頭部を数回も殴打する行為は、人の死という殺人罪の構成要件的結果発生の現実的危険性を有する行為といえ、殺人罪の実行行為にあたる。

2 そして、X死亡という結果も発生している。

3 もっとも、本件で、乙の行為後に第三者たる甲丙の行為が介在していることから因果関係が否定されないか。

⑴ この点、因果関係は構成要件該当性の問題であり、構成要件は違法・有責な行為を社会通念に基づいて類型化したものである。とすれば、条件関係の存在を前提に、一般人が認識予見しえた事情および行為者が認識予見していた事情を基礎事情として、当該行為から当該結果が発生することが社会通念上相当といえる場合には因果関係が認められると解する。

 ⑵ 本件では、まず、乙の行為がなければ、X死亡という結果は発生しなかったといえるので、条件関係は認められる。

   次に、基礎事情について検討するに、乙の殴打行為をやめせXを助けるかのような行為を行った甲丙が、病院前までXを運びながらその後放置したり、植込みの陰に運ぶ等といったことは、一般人に予見しえないし、乙も予見していない。

   よって、上記介在事情は基礎事情とはならない。

 そうだとしても、極めて堅い鈍器たるゴルフクラブで人の身体の枢要部である頭部を数回も殴打したことで、頭部からの出血により失血死することは、通常ありうることであるから社会通念上相当といえる。よって、因果関係も認められる。

4 また、乙は、「殺意をもって」行っているので、故意(38条1項)も認められる。

5 以上から、乙に殺人罪が成立する。

第2 甲の罪責

1 甲が、Xを病院前に放置した行為につき保護責任者遺棄罪(218条前段)が成立しないか。

 ⑴ Xは、重傷を負っているので「病者」にあたる。

 ⑵ そして、甲はXの直系血族である子であって、扶養義務(民法877条1項)を負う者であるから「保護する責任のある者」にあたる。

 ⑶ では、甲は「遺棄した」といえるか。「遺棄」の意義が問題となる。

  ア この点、作為による置き去りや不作為による位置も観念しうるのでこれらの行為も「遺棄」に含まれると解すべきである。また、法解釈の統一性の観点から217条と218条の「遺棄」は同義に解すべきである。

 そこで、「遺棄」(217条、218条)には、作為・不作為による移置・置き去りの全てを含むと解する。

 また、同罪は、生命に対する具体的危険が生じることまで要するものでなく、抽象的な危険の発生で「遺棄した」といえると考える。

 イ 本件で、甲はXを車から降ろすという作為により、Xを病院前に置き去りにし、   

  Xの生命に対する抽象的危険を生ぜしめているので「遺棄」にあたる。

  ⑷ したがって、甲に、保護責任者遺棄罪が成立する。

2 では、甲は、Xの死亡についてまで責任を負い、保護責任者遺棄致死罪(219条 

 罪責を負うか。甲の行為と、X死亡という結果の間に丙の行為が介在していることか 

 ら因果関係の有無が問題となる。

  本件では、甲とともに乙の行為をやめさせた丙が、殺すつもりでXを植込みの陰に 

 運ぶことは一般人には予見しえないし、甲も予見していないので、丙の介在事情は基 

 礎事情とならない。

  そうだとしても、頭部から出血し意識不明のXを路上に放置しておくことは、たと 

 え病院前であっても、人通りの少ない夜間であることを考慮すると、誰にも発見され 

 ず失血死することも社会通念上相当である。

  よって、因果関係が認められ、甲に保護責任者致死罪が成立する。

第3 丙の罪責

1 丙は甲と共に病院前にXを放置し、その後、Xを植込みの陰に運び立ち去っている 

 ところ、これらの行為はXを殺すための一連の行為であると考える。そこで、かかる 

 行為につき、不作為による殺人罪が成立しないか。

⑴ まず、丙がXを植込みの陰に運ぶという行為は作為であるから、作為による殺人に 

 問疑すべきとも思える。しかし、ここでXの死の結果を招きうるのは、植込みに運ぶ 

 ことそれ自体ではなく、Xを病院に連れて行かないという不作為の側面であるから、 

 不作為犯の検討をすべきと考える。

⑵ア そして、不真正不作為犯の実行行為性は、作為と構成要件的同価値性のある行 

  為、具体的には、①作為義務があり②作為の可能性・容易性がある場合に不作為の 

  実行行為性が認められると解する。

 イ 本件では、丙は、甲と共にXを病院へ連れて行こうとして車に乗せているので引 

  受行為を行い、自己の排他的支配下においたといえ、①作為義務が認められる。

   また、病院前まで来ていたのであるからXを病院に連れて行くという作為を行う  

  ことは②可能かつ容易であったと言える。

⑶  よって、殺人罪の実行行為性が認められ、丙に殺人罪が成立する。

第4 なお、甲の保護責任者遺棄致死罪と丙の不作為による殺人罪は、人の生命という保護法益が共通し、Xを放置するという行為態様が共通するので、甲丙に前者の共同正犯(60条、219条)が成立し、丙は、別途殺人罪の単独犯の罪責を負う。

以上

 

 

 

 

 

 

問題2論点

・不真正不作為犯

・因果関係

・「遺棄」の意義

・作為と不作為の区別

 

ゆ文責:瀬戸宗一郎


H25予備試験合格

H26司法試験合格(最年少)




1 はじめに
以下に予備試験直前期に私が実際に何をしていたかを書きたいと思います。ただ、実際に何をしていたかのほかに、なぜそれをしていたか、今だからいえる最善の勉強法、私の意見等が混ざってしまっていますので、その点だけはご了承ください。書いていると意図せず説明口調になってしまうことがあるので、合格体験記とは少し違う文章の雰囲気になってしまいますが、書いてあることのほとんどが私が実際にやっていたことである点は変わりません。

まず、初めにですが、いまから書くことは、私が直前期に何をしていたかという内容ももちろんですが、それ以上に勉強法の一般論的な色彩が強くなっています。なぜかというと、私は直前期とそれ以外とで特に勉強のやり方を変えてはいなかったからです。普段の勉強でも、直前期でも、その最終的な目標は問題を解けるようになることですから、目標が同じである以上、今まで自分がやってきた勉強をそのまま続けていけばいいはずだと考えていたからです。ですので、受験生のみなさんも、自分が今までやってきた勉強法をそのまま続けていただくのが一番かと思います。そのうえで、今から私が下に書くことを、自分と合う部分だけ取り入れてもらえればいいかなと思います。

2 論証と問題の反復
私は、直前期であっても、第一にやるべきことは基本的な論証・問題の反復だと考えていました。実際に勉強の大部分を暗記に割いていたと思います。これにはいくつか理由があります。
まず、司法試験や予備試験は難しい問題が出るので、それを全部解けなければ受からないかのような錯覚に陥りがちです。しかし、実際は時間内にそれを真面目に考えることは極めて困難ですし、また基本論証の暗記すら不十分な人も多いことから、応用的な問題点では勝負がつかず、基本的なことを淡々と書けたかで勝負が決まってしまいます。
また、もし応用的な問題に食らいつくにしても、全てを自分で一から考えるのには無理があり、基本的な論証、基本的な問題を叩き台にしなければなりません。そのうえで、自分が知っている論証や問題とどこが違うかという観点から考えていくことで、筋を外すことは格段に少なくなると思われます。
さらに、試験本番では、制限時間は70分、書く時間を仮に50分とすると、答案構成にかけられる時間は20分しかありません。この20分間で、書くことをすべて決めなければならず、典型論点について考えている時間はありません。難しい問題であればあるほど、前提として典型論点は一瞬で処理する必要があるのです。
ですので、私はたとえ論文直前期であってもやるべきことは普段と同じ、基本的な論証と問題の反復であると考え、それを反復継続していました。なにか違うことや特別なことを殊更にやらなければならないのではないかという不安に駆られる必要はないのではないかと思います。

3 穴を無くす

そのうえで直前期に私が気を付けていたこととして、穴を無くすという意識があります。予備試験では、細かい論点を聞かれることが多く(僕が受けた2回は少なくともそうでした…24年の物上保証人の事前求償権、25年の訴因と択一的認定・しかも捜査と証拠からの出題なし)、しかも、このような問題は基本的なことがほとんどで、暗記が出来てさえいれば本来得点源になりうるものです。しかし、司法試験(予備試験)で覚えるべき論点は七法で1000個(?)ほどあり、細かい論点には穴があることが多く、結果として多くの人が不十分な論述になってしまいます。そして、裏を返せば、他の人と差がつきやすい場所であるということです。細かいながらもあくまで「基本知識」なので、出来なくてもいいという言い訳はできませんし、暗記するだけで差がつくのですから非常に簡単ともいえます。なので、私は、普段の勉強では覚えていない論証を無くすという意識で勉強をしていました。今では市販の論証集(アガルート等)を使うのが良いと思います。網羅性や学習効率を考えた場合には旧司法試験の過去問が良いと思います。私の友人は内藤先生の旧司法試験過去問集をひたすら写経して1年後に受かっていました。



4 答練・模試は必ず受ける
私は、直前の答練・模試を合わせて5回受験しました。当たり前のことですが、答練・模試は必ず受けましょう。というのも、特に大学生ですが、面倒なのか直前期に答練・模試に行かずに自分で勉強をして試験を受ける人が多いように感じます。しかし、これは未知の問題をちゃんと時間を計って解くという経験ができない、時間配分の練習ができない、全体の中での自分の位置がわからない、などデメリットしかありません。また、中には「予備校の問題は質が悪いから受けない」と言って受けない人もたまに(?)見受けられます。しかし、仮にその仮定が正しいとしても、答練・模試を受けないのは明らかな間違いです。質がどうであろうと、全員が同じ問題を解きその中で順位付けがされるのは変わらないので、必ず受けるようにしてください。自分の全体の中での順位を確認しないまま本試験に臨むのは自殺行為です。
とはいえ、答練は自分の覚えてきたことを表現する練習の場にすぎないので、暗記が第一なのは変わりません。それに答練を一回受けると大体土日の大半が潰れるので、他の勉強に割く時間が削られます。ですので、自分の勉強の進度と相談しながら回数を調整しましょう。最低でも3回(10科目全て)は受けるようにしたほうがいいかと思います。

5 実務基礎科目の比重
おそらくここが一番ネックになっていると思います。ただ、私も合格した年ですら、実務基礎の対策は不十分なまま試験に臨んでいました。刑事実務の事実認定に関しては、答案の書き方が全く分からないまま、本番の試験でも作文をした記憶があります。ですが、それでも実務基礎の評価はBだったので、大した対策が出来ていなかった人が多かったのだと思います。しかも、試験範囲が不明確、予備校の対策も七法ほど追いついていないということもあり、点数が取りやすい科目とはいえず、あまり対策に時間をかけるべきでないとすらいえます。ですので、とりあえずは七法の対策を先決にして、実務基礎はあまり根を詰めて対策をする必要はないでしょう。実務基礎の対策が不十分であると感じても、それはみんな同じですので、殊更不安な気持ちになる必要はありません。
とはいえ、実務基礎の知識が全くないのと多少あるのでは、取れる点数に開きがあることは変わりません。ですので、私は、実務基礎の勉強は、「基本的な知識・問題は一度は見たことがある状態にする」といった程度にサラッとやっていました。

6 実務基礎で勉強すべき範囲
上で述べたように、実務基礎の勉強は「基本的な知識・問題は一度は見たことがある状態にする」といった程度でいいのですから、勉強すべき範囲(私が実際に勉強をした範囲と一致)としては、民事実務が要件事実と証拠法(二段の推定等)、法曹倫理、刑事実務が事実認定と手続(公判前等)、法曹倫理といったくらいでいいでしょう。到達地点もそこまで完璧にする必要はなく、「出てしまったときに筋を外さない程度には書ける」といった程度でいいと思います。

7 民事実務
まずは要件事実です。私が使った教材は、新問題研究要件事実(法曹会)、要件事実問題集(岡口基一)です。どちらの本も、新しい訴訟物が出てくるたびにその要件事実を覚える、なぜそれが要件事実となるのかの理由も覚える、新しい抗弁が出てきたらそれも覚えるといった形で進めていきました。ここで注意すべきは、例えば賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求権の場合、「原告は、被告に対し、平成○年○月○日、本件建物を、賃料月額○万円で賃貸した。」「原告は、被告に対し、同日、本件賃貸借契約に基づき、本件建物を引渡した」など、実際にどのように記載するかというテクニック面は聞かれない傾向にあるので、これを覚える必要はないと思います。私は「賃貸借契約の成立(目的物と賃料の記載)」「基づく引渡し」といった程度にやんわりと覚えていました。
本の難易度としては、新問題研究要件事実が超入門書、要件事実問題集が難しいといった感じです。予備試験の要件事実の勉強のために、本来難しい本や分厚い本を読む必要はないと思うので、後者をもし読まれる方がいましたら、基本的な知識の部分のみを覚える程度にして、深入りはしないようにしてください。現在同じ岡口裁判官が執筆された本で、要件事実入門(初級者編)という予備試験受験生向けの本が出ているので、そちらを読んだ方がいいかもしれません。
証拠法については、各予備校から出ている実務基礎テキストで足りるのではないかと思います。私はLECのものを使っていました。これ以上のものが出ても、おそらくできる人は少数だと思うので、大した失点にはなりませんし、これを完璧にするくらいなら点数の取りやすい刑法や商法などをやってほうがいいでしょう。ですので、これらのテキストの証拠法のところを何周かする程度でいいと思います。法曹倫理についても同様でいいでしょう。
なお執行保全は口述では頻出ですが、論文ではまず出ないと思われるので、捨ててしまっていいでしょう。

8 刑事実務
まずは事実認定です。使っていた本は刑事事実認定重要判決50選という本です。55個判例が記載されていますが、このうち重要なものを20個ほど、予備校のテキスト等と対照しながら選び出して、それについての解説を読むといった感じでいいと思います。覚える点は、考慮要素は暗記、あとは判決ではどのような要素を用いてどのような判断がされたかをやんわりと論理だけ覚えておく、といった感じでやっていました。とはいえ、この本はあくまで判例集なので、答案の書き方などが解説されているわけではありません。ですが、私は、時間がなかったこともあり、この本しか読みませんでした。すなわち、答案の書き方がわからないまま本試験に突入したことになります。七法なら即死レベルだと思います。ですが、それでも評価はBでしたので、周りの人も全員いかに対策が追い付いていないのかということだと思います。ですので、繰り返しにはなりますが、実務基礎の対策が追い付いていなくても、それはみんな同じです、殊更にナーバスになる必要はありませんし、むしろ七法で挽回してやるというくらいの気持ちで勉強を進めてください。
一応私が勝手に考えていた答案の書き方のイメージを言うと、ほぼ刑法のあてはめと同じような感じです。一つ一つ事実を抜き出して、逐一評価を加える、その事実からどのようなことが推認できるのかということを書いていく、問題文にある事実はすべて使っていく、といった感じです。例えば「事件の2日後に盗品を所持、弁解が不明瞭→何らかの形で事件に関わっていることが推認される」「入口の防犯カメラには甲のみが映っている、部屋は4階にあり外部から侵入は困難→犯人は甲であることが強く推認」といった風です。誰かの供述があればまずはその供述が信用できるか検討→信用できれば、その供述からどのようなことが推認できるかを同じように書いていました。また、犯人の自白、犯行目撃証言等の直接証拠は補充的に最後に検討するといったくらいのことは気を付けていました。
手続、法曹倫理については、民事実務と同じく、予備校のテキストでやっていました。法曹倫理は毎年民事から出題されるので、刑事の法曹倫理は捨ててもいいかもしれません。


※後日、各論編と称する続編を投稿致