手嶋龍一 佐藤優「知の武装 救国のインテリジェンス」 | ヒロエモンのハッソーハッソー

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外交ジャーナリスト・作家の手嶋龍一氏と、元外務省主任分析官でソ連の日本大使館での勤務経験もある佐藤優氏による「知の武装 救国のインテリジェンス」を読みました。

2人の対談形式で進むためとても読みやすくなっています。

インテリジェンスとは、「膨大な一般情報を意味するインフォメーションから、きらりと光る宝石のような情報を選り抜いて、精緻な分析を加えた情報のエッセンス」との事。その一例として2020年東京オリンピックの決定劇について挙げられています。あのスノーデン事件やロシアで「同性愛宣伝禁止法」が成立したことでロシアは西側諸国から批判や顰蹙を買っていたわけですが、そんな時に日露首脳会談が決定したことでロシア側の日本を見る目が変わり、ロシアから3票が得られ、オリンピックの東京招致が決定したというものです。

また2013年5月の飯島訪朝では数枚の写真から様々な分析を行っています。写真に写っている人物の立場、立ち位置やカバンの中身、置物まで分析の対象となっています。そして訪朝を実現したと言われる影の人物についての話。

今回の訪朝では親書は持参しなかったようですが、実際に親書を作成した経験のある佐藤氏によれば、親書には書き方があるとのこと。正式な形でないと外交上非礼にあたるということですが、実際に韓国が野田首相の親書を日本に送り返してきたことがありました。その時の理由は「写しが付いていないから」ということで、送り返してきたことで日本では批判が巻き起こりましたが、実際には形式が整っておらずは外交上非礼に当たったようです。親書を作成した経験のある人間が少なく、そのものにやらせなかったりとか、外務省を巻き込まなかったりとか、そういったことが原因かもしれません。

他にも尖閣問題やスノーデン事件、TPPなどについても興味深い対談が行われています。

最後の方に情報の上がり方についても触れられていました。インテリジェンスは様々な情報を選り抜くものですが、トップが自分の考えを漏らしてしまうと、部下はトップの意に沿った情報を選択するようになり、そのため誤った判断をしてしまうことがあります。イラクに大量破壊兵器があるとしてイラク戦争の火蓋が切られた件がありましたが、それは当時ブッシュ大統領がラムズフェルド国防長官にイラク攻撃の作戦案を策定するよう密かに命じたことがじわじわと政府部内に伝わり、大量破壊兵器の存在を示す情報ばかりがホワイトハウスの中枢に集まってしまったことが原因であるとしています。

組織論まで話が行き、個人的には非常に興味深く読むことができました。今度はこの2人の著作も読んでみようと思います。