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大前研一氏の「民の見えざる手」を読みました。
この本は週刊ポスト連載「ビジネス新大陸の歩き方」とリクルート「コレカラ」連載「人生、楽しく・とにかく楽しく」の記事をもとにまとめた書籍となります。
自分は経済やビジネスに関する本が好きでよく読んでいるのですが、多くの経済学者が「言うだけ」であるのに対して、大前さんは「言って、どうするか教えて、人材を育成する」この3拍子揃っているので説得力が違うと感じています。
この本の内容を一言で言うと「経済は理屈だけではない。人々の心理的な側面も影響がある。」ということになるでしょうか。とりわけ日本ではリーマンショックにより多くの中小企業がいまだに立ち直れていない中、デフレにより経済が冷え込んだまま国の財政も火の車でお先真っ暗という感じでしょう。
大前さんはまず耐久消費財について倹約による消費の落ち込みを改善するために様々な先進国の例を挙げながら有効な消費刺激策を展開するべきだと説きます。
また大手スーパーが「夫婦と子どもからなる世帯」(1464万世帯)はもはや少なくなっているのに相変わらずターゲットとしているため売上が低迷しているのに気が付かないこと、それに対して「単身世帯」(1333万世帯)が肩を並べるほど多くなっているのにコンビニしか彼らを顧客としか見ていない現状を指摘。デフレによる低価格競争にも警鐘を鳴らし、多くが価格と価値を混同したため失敗していると指摘している。
日本経済についても多くの提言を行っています。これ以上税金を財源とせず、「規制撤廃」によって金脈を掘り出せというもので、「市街化調整区域の撤廃による計画的な都市開発」「湾岸地帯の用途制限を撤廃し100万都市を」「建物の容積率を大幅に緩和して建築物の高機能化」により開発のインセンティブを図り、需要を喚起し、国民のグッドライフを図るといいます。
そして大前さんが以前から言っていた「世界に通用する日本人」の育成についても他の国の例を挙げながら述べています。日本は「寄らば大樹」の人材ばかりで、今や国を挙げて「英語」と「IT」を強化した韓国に追い抜かれている状況です。教育は金ではなく内容が悪いので世界に通用する日本人が出てこないということ。
連載をまとめたものということもあり、内容的には話の流れがブツ切りの感もありますが、具体的な政策提言なども行っており、単なる日本経済についての不安をあおるだけの本とは一線を画す内容となっています。
私は大前さんの本を何冊か読んでおりますが、この本を読んで、これまで様々な提言を行ってきたにもかかわらず日本が何も変わらない現状に大前さんにどこかあきらめの気持ちが見え隠れしているのが気になるのですが・・・。
