日本四端制覇旅行(8月から9月にわたって) 2024年8月8日

 

8月8日、広島市内を出発し、佐世保の神崎鼻(日本列島の西端)に到着した。びっくりしたことに、たった1日で目的地に辿り着いたのである。

その日の走行距離は378Kmにも及んだ。関門海峡を越える際には通行料を支払い、佐賀に到着した時には気温が最高38度まで上昇していた!

 

疲労困憊していたが、佐賀での昼食に地元の名物ラーメンを味わう機会を逃すわけにはいかなかった。九州と言えば、豚骨ラーメンが真っ先に思い浮かぶ。その濃厚な味わいと独特の香りは、多くの人々を魅了してきた。しかし、この佐賀ラーメンには、驚くべき特徴があった。通常、ラーメンセットと言えば、ギョウザとご飯(またはチャーハン)とラーメンの組み合わせが定番だ。ところが、佐賀では予想外の要素がセットに含まれていたのだ。それは、なんと目玉焼きだった。

最初は目を疑ったが、周囲を見回すと、ほとんどの客がこの珍しいセットを注文しているのが分かった。これは明らかに、この地域独特のご当地グルメなのだろう。地元の人々にとっては日常的な光景かもしれないが、旅行者の私にとっては非常に新鮮で興味深い発見だった。ラーメンと目玉焼きの組み合わせ。一見すると奇妙に思えるかもしれないが、実際に食べてみると、その相性の良さに驚かされた。

 

 

豚骨ラーメン自体の味は言うまでもなく絶品だった。濃厚でクリーミーなスープは、長時間の移動で疲れ切った体に染み渡り、活力を与えてくれた。麺は適度な歯ごたえがあり、スープとの相性も抜群だ。そして、その横に添えられた目玉焼き。黄身をラーメンに絡めて食べると、まろやかさが加わり、新たな味わいを楽しむことができた。

この独特な食文化に触れながら、ふと亡きKのことを思い出した。彼もこの地を訪れ、同じようにこのユニークなラーメンセットを楽しんだのだろうか。もし彼がここにいたら、きっと目を輝かせながら「面白い組み合わせだね」と言っていたに違いない。Kの旅の足跡を辿りながら、彼の分まで味わっているような気がした。この佐賀ラーメンの経験は、単なる食事以上の意味を持つ、心に残る思い出となった。

 

 

疲労困憊していたにもかかわらず、やっと佐世保についた。当然、日本列島の西端を象徴するモニュメントを見逃すわけにはいかなかった。すぐ近くにバイクを駐め、体の疲れを押し返し、決意を新たにして、手すりを頼りにしながら、一歩一歩ゆっくりと階段を登っていった。息を整えながら、モニュメントに向かって慎重に降りていく。その道のりは短くはなかったが、目的地に辿り着いた時の達成感は何物にも代えがたいものだった。

 

 

 

ついに目的地に到着し、記念写真を撮影した。シャッターを切る瞬間、この旅の重要な瞬間が永遠に残されることを実感した。シャッターが降りる間、胸いっぱいに様々な思い出がよぎった。特に、かつて懇意にしていたKくんのことが鮮明に蘇ってきた。彼もまた、この日本四端制覇旅行に挑戦していたのだ。しかし、東端だけは制覇できないまま、白血病という病魔に倒れてしまった。その悲しい運命を思い出すと、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。

「きみの踏んだあとを、ぼくも踏んでいるよ。君の夢を、僕が代わりに叶えているんだ」

私は心の中で、Kくんに呼び掛けていた。その瞬間、風が頬をなでていくのを感じた。まるでKくんが応えてくれているかのようだった。モニュメントの前に立ち、遥か彼方に広がる海を眺めながら、この旅の意義を改めて噛みしめた。それは単なる個人的な挑戦ではなく、亡き友の想いを背負った、深い意味を持つ旅なのだと。

 

 

 

ところが佐世保宿泊地に到着した頃、突如として地震情報が入ってきた。南海トラフ地震の臨時情報だった。「今、地震が来たらどうしようもない」と思いながらも、実際にはまったく揺れを感じなかった。ほっと胸をなでおろした。

 

18時になり、ようやくゲストハウスでシャワーを浴びる時間が来た。そのシャワーの設備には驚かされた。筒型のカプセル状のシャワーブースで、シャッターをガチャガチャと閉めると、突如として全身に勢いよく水が噴出してくるのだ。爽快感はあったものの、ほとんどが水温で、お湯が出てきたのは最後のほんの少しだけだった。シャワーを浴びている最中、突然右足に激痛が走った。単なるこむら返りどころではない、激しい痛みだった。一時的だったが、忘れられない思い出になった。

宿泊したのは男女相部屋のドミトリーで、二段ベッドの下段に陣取った。幸いにもパソコンを使える環境だったので、PCを操作しながら、ゲストハウスで500円で販売されているハイボールを楽しみ、ゲストハウスに入る前に購入したお弁当と生茶で簡素ながら満足な夕食をとった。

 

離職し、再就職するまでの間に、今しかKの無念を晴らす機会はないと決意して始めた旅行だった。それは贅沢とは程遠い、質素で地味な旅行だ。しかし、その質素さの中にこそ、この旅の本質があった。豪華な宿泊施設やグルメな食事を楽しむことよりも、Kの夢を引き継ぎ、彼の想いを胸に刻みながら日本の四端を巡ることに意味があったのだ。経済的な制約はあったものの、それは逆に旅の本質に集中できる環境を作り出してくれた。シンプルな旅程と最小限の荷物で、Kの足跡を辿り、彼の夢を実現させることに全身全霊を注ぐことができたのだ。

8日のゲストハウスでは、ハイボールを作ってくれたオーナーさんが親切にも「日本酒はいかがですか?」と声をかけてくれた。せっかくの機会なので、冷酒を少量だけ頂戴した。初めてのゲストハウス体験だったが、予想以上に快適で楽しい時間を過ごすことができた。

就寝前に、オーナーに「夜中に出発してもよろしいでしょうか?」と丁寧に許可を求めた。了承を得た後、18時から深い眠りについた。その夜、午前1時に起き、静かに着替えを済ませ、バイクにまたがった。8月9日の未明、新たな冒険へと出発する準備が整った。

8月10日に南端に着く予定だが、果たして上手くいくだろうか。