新さかなの経済学 | ウッカリカサゴのブログ

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日本産魚類の仔稚魚のスケッチや標本写真、分類・同定等に関する文献情報、
趣味の沖釣り・油画などについての雑録です。

新さかなの経済学

 単行本 – 2024/5/21
山下 東子 (著)

【内容紹介】
日本の漁業の生産量・生産額はこの30年減り続けている。
魚の消費量もこの20年右肩下がりだ。漁業の未来への活路はあるのか。

【目次】
序章 漁獲量はなぜ減ったのか:マイワシバブル

第1章 規制改革:サバのIQ
 はじめに
 漁獲の8割がTAC下に
 TAC魚種は流動的
 サバへのIQ割当
 IQ融通の実態
 ITQ化で市場メカニズムを活用
 過去実績:現実的な割当方法
 過去実績の配分がもたらす諸問題
 漁業者の不満は行動経済学が説明
 棚ぼた問題:レントの行方
 オークション:机上の空論
 自己査定型資産税の適用
 IQは後戻りが難しい

第2章 漁業権:桃浦牡蠣の陣
 はじめに
 三種類の漁業権
 採貝藻は共同漁業権
 大型定置は定置漁業権
 養殖は区画漁業権
 地元優先から経営手腕優先へ
 優先順位の変更
 企業アレルギーの素をたどると……
 桃浦牡蠣の陣
 戦に勝って勝負に負けた
 新規参入の成功例:マグロとサーモン
 養殖漁場は空いているのか
 漁場は空いていない
 戸倉のシンデレラ・ストーリー
 漁業権の壁が守るもの
 外資規制とトリプルスタンダード

第3章 所得向上に大義はあるか:漁業者という資源
 はじめに
 使命は国民への水産物の供給
 漁業者主体という使命の終わり
 漁業の民主化という使命の終わり
 所得向上という政策目標
 経済メカニズムに委ねる解決法
 漁業者こそが保存すべき資源
 輸出振興と国内供給の板挟み
 6次産業化と人手不足
 良い補助金・悪い補助金
 多面的機能という免罪符
 海に境界線を引く
 海は誰のものか
 カーテンの向こう側

第4章 外国人労働者:敵か味方か
 はじめに
 ルポ・漁業就業支援フェア
 求人と求職のミスマッチ
 外国人ならマッチング
 海技士というハードル
 技能実習生制度の問題と改正
 特定技能へのキャリアパス
 日本人と外国人を同質の労働者とみなすケース
 日本人と外国人の技能に差があるケース
 外国人船員が増えたら桶屋が儲かる?
 労働生産性は停滞するか?

第5章 魚市場の謎:車海老の製品差別化
 はじめに
 小田原市場にて
 せり・入札、相対取引
 抜け目のない民設市場
 築地も物流センターだった
 オウンゴールの場外流通
 情報公開と完全情報
 車海老に見る価格差別化
 価格差別化と消費者余剰
 車海老に見る製品差別化

第6章 生物多様性:ご当地サーモンがやってきた
 はじめに
 シロサケ(秋鮭)の一生
 イクラと白子で待遇に違い
 ふ化事業に負のスパイラル
 生物多様性への配慮
 ネコマタギの復権
 世界の主流は養殖生産
 チリギンと宮城産銀ザケ
 ご当地サーモンがブームに
 サケにオランダ病?
 成長産業化への課題

第7章 資源ナショナリズム:マグロは誰のものか
 はじめに
 何かと話題の太平洋クロマグロ
 マグロは共有資源だが……
 大間のマグロは一本釣り漁法
 3つの市場の危うい均衡
 近大まぐろへの期待と課題
 近大の次は愛媛大か?
 ツナ缶界のキングはビンナガ
 FADsの功罪
 小島嶼国の資源ナショナリズム

第8章 SDGs:太平洋島嶼国はカツオ街道
 はじめに
 太平洋島嶼での建国
 島の陸地と海洋資源
 200カイリ体制とカツオ資源
 定額料金制のVDS
 カツオで潤う国家財政
 MIRAB経済
 沿岸漁業は家事の1つ
 SDGsに照らしてみれば
 出稼ぎの功罪
 島と海まで売りますか?

第9章 絶滅危惧種:うなぎの親子市場
 はじめに
 ニホンウナギの天然サイクル
 ウナギの親子市場
 ウナギ資源の減少要因
 縮小する市場
 絶滅危惧種ビジネス
 陸揚げ後にウナギが国際移動
 いつも食べているウナギの出自
 良い密輸、悪い密輸
 ウナギの採捕規制:シラスと天然ウナギ
 「食べて増やそう」はいかがなものか
 「増やして食べよう」はいかがだろうか

第10章 肉と魚:消費者の魚離れ
 はじめに
 需要側と供給側の要因
 平成期に肉が魚を代替
 30~50代が魚離れ
 平成期を通じて価格は安定
 米は補完財から代替財へ
 所得の増減と水産物消費額の減少
 高齢化と肉・魚消費
 嗜好の変化と需要曲線
 時短志向と魚料理の敬遠
 家事時間の短縮
 調理済み食品へのシフト
 供給曲線のシフト
 魚離れは下げ止まるのか

第11章 魚あら:ゴミを宝に
 はじめに
 非食用水産物の市場規模
 魚あらと食品ロス
 魚粉双六
 魚粉ひっ迫で魚あらが代替
 ふりだしに戻る
 魚あら利用のドライバー
 魚あらがお宝に変わるまで
 製品の高度化・細分化と市場の縮小
 鰹節屋の「練節」
 魚あら処理の「経済性」
 “やっ貝”なことは先送り

第12章 技術革新:スマート漁業への期待
 はじめに
 ルーブリックを用いたICT化の進行経路
 漁船漁業はすでに技術集約型
 情報の蓄積と流通で双方が利益を享受
 夢が膨らむ流通改革
 ロジスティクスの最適化
 養殖業とICT
 水産ICTの波及効果
 ICTでアポリアが消える?
 インターネット哲学