【メモ】ペースメーカーを装着した患者さんが死亡した場合の問題点 | ウッカリカサゴのブログ

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長沙民政職業技術学院 遺体管理学教授  伊藤 茂 氏

 

『多くの電池が高熱化で破裂する様に、ペースメーカーに内蔵されているLi電池も火葬炉内の熱で破裂し、同じくチタン製の本体も、高熱により内部気圧が上昇し破裂する。
火葬開始後(炉内にバーナーが点いてから)5~10分で、大きな破裂音が火葬場内に響き渡る。』

 

『破裂したペースメーカーは爆発により火葬炉内に飛散し、その破片が火葬炉内に貼られた耐火レンガを直撃し、耐火レンガを破損させる。
破損した耐火レンガは貼替えが必要で、火葬炉メンテナンス費用の増額や場合によっては火葬炉耐用年数が短縮される。』

 

『ペースメーカーが破裂すると、飛散したペースメーカーの破片が覗き窓を直撃し、覗き窓で火葬炉内部を確認していた職員や、覗き窓周辺の職員が割れたガラス等で受傷する場合がある。』

 

『ペースメーカー装着遺体への対応策としては、そのままの状態でご家族に引き渡す(火葬は装着状態で行う)か、ペースメーカーを摘出するか、2つの方法が考えられる。
3番目の方法として「経皮的ペースメーカー穿刺」が簡易であるが、国内では実施されていないと思われる。
国内ではシンガポールの様にペースメーカーの除去が法令で定められている訳ではなく、あくまでも「患者さん自身やご家族の意思」に委ねられる。
そのために、ペースメーカー装着患者さんが死亡した場合には、ご家族に対して「そのまま残す方法」と「摘出する方法」があり、どちらを選択しても良い旨を伝え、ご家族の自由意志で選択して貰わなければならない。』


『この場合、残す場合のメリットとデメリット、摘出する場合のメリットとデメリットを正確に伝え、充分な情報提供による選択が必要不可欠である。』

 

『行政機関や火葬場では、ペースメーカー装着ご遺体の火葬を拒否はしない。
ただし、ペースメーカー装着ご遺体であることを事前に伝えて貰いたいとの指導を行っている。
これも強制ではなく「お願い」の範囲ではあるが、火葬場職員が失明の危機に曝されることから、厳守が望まれる。』

 

『10年以上前に、国立大学の教室が、「ご遺体からのペースメーカー摘出は死体損壊罪に当たる」との考えを学会に発表していたが、火葬により破裂してご遺体や関係者に害をなす可能性のあるペースメーカーをご遺体から摘出しても、第190条の法益を損なうとは考えにくく、ご家族の判断に基づき行われる限りは、近年の第190条の法的解釈は「死体損壊罪」は適応されないとの考えが主流となって来ている。
ご家族の自由意志により判断され、ご家族の依頼により行われるペースメーカーの摘出は違法性が低いとの考えがあるが、患者さんに対する手術や検査と同様に、「充分な説明」と「ペースメーカー摘出依頼・承諾書」等へのご家族の署名が望まれる。』

 

『関連学会では1988年に、ペースメーカー装着者の死亡時の対応について報告書を出しており、ペースメーカー協議会では摘出したペースメーカーは「感染性廃棄物」と位置づけしているが、ご家族にとっては「大切な遺品」でもあり、引き取りを希望されるご家族も多く存在することから、その気持ちを優先した上でこれらも検討する必要があるのではないだろうか。』

 

 

新しいペースメーカの考え方と患者さんの死亡
http://sokei.jp/angelcare_archive/post_20.html

放射線源を有する患者さんの死亡時の対応
http://sokei.jp/angelcare_archive/post_11.html

パンデミックとご遺体
http://sokei.jp/angelcare_archive/post_18.html

 

「遺体管理学」のススメ
http://sokei.jp/angelcare_archive/post_15.html