オオクチイシナギの稚魚 | ウッカリカサゴのブログ

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日本産魚類の仔稚魚のスケッチや標本写真、分類・同定等に関する文献情報、
趣味の沖釣り・油画などについての雑録です。

 

オオクチイシナギの稚魚(全長13.6mm)

 

出典:海生研ニュース第20号表紙(1988年7月)

 

オオクチイシナギの成魚は,高知・石川~北海道,朝鮮半島の沿岸の水深250~750mの岩礁域にすんでいる。特に,北海道の積丹半島以南と襟裳岬以西に多いという。若魚は成魚より浅い所にすみ,底曳き網などでしばしば混獲される。

 

晩春から初夏には,産卵のため水深60~200mの浅場に移動する。卵は分離浮性で直径1.3mm前後,1個の油球があり,抱卵数は最大2,400万粒とか。

 

浅場に乗っ込んでくる晩春から初夏がイシナギ釣りの唯一のチャンス。江差,金華山,房総勝浦,伊豆,串本沖などが有名な漁場で,それぞれの土地にイシナギ釣りの名人がいるという。

 

ちなみに,林 房雄氏の著した『緑の水平線』は,房総勝浦沖でのイシナギ釣りをテーマにした釣り文学である。老成すると体長2m,体重280kgに達するというから,この釣りはまさに魚と人間の格闘技である。

 

若魚には体側に4~6本の黒褐色の幅広い縦縞があるが,この縦縞は成長するにつれて次第に薄くなり,老成魚では体色は一様に黒褐色となる。

 

図示した稚魚は,佐賀県玄海町の岸辺で4,5月に採集された全長13.6~21.7mmの11個体のうちの最小個体である。千葉県御宿の漁港内でも,3月と7月にそれぞれ全長14.0mmと10.8mmの稚魚が採集されている。これ位の大きさの稚魚は波打ち際や岸近くの表層で生活し,流れ藻やゴミなどの浮漂物に付随していることもある。

 

〔参照〕

乃一哲久・神原利和・水戸鼓・坂本史子・木村基文・千田哲資(1990)

長崎県柳浜におけるオオクチイシナギ(スズキ科)稚魚の出現と生態
長崎大学水産学部研究報告, v.68, pp.29-34.

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記事タイトルでの種名の一覧性と自己引用の便を考慮し,本ブログの最初の3件〔仔稚魚のスケッチ(その1~その3)〕で示した種類について,種別に再掲(説明文の追加あり)したものの一つです。