アデライン 100年目の恋  |   心のサプリ (絵のある生活) 

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これまた、まったく予備知識なしに、映画館で、時間にぴったりの映画を聞いて、あまりピンとこない題名だったが、見た。そして、B級映画でも楽しめる私は、なんとかなると考えていたが、なんということか、かなりはまり込めた。


ただ、レヴューなどをチェックしてみると、「これはアンチ・エイジング」の映画だとか、、試写会の時に、ファッション関係の女性達が感想を対談形式で、この映画のなかのファッションやら、ゴシップガールだったか、ヒロインの女性の美しさについて、語り合っていたせいか、現代のおとぎ話的な、感想が多かったが、私は違う。


SF映画としても、楽しめる。


たとえば、私は、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」なんかを連想する。そのような楽しみ方ができるシネマで、奇妙な味の小説というジャンルがあるかと思うけれども、それに近いのではないだろうか。



29歳で、歳をとらなくなる女性、その理由が、映画館の暗闇のなかで、この映画を見ていると、なにやら納得させられるのだ。


それは、理科系の知識というよりも、バタフライ効果のような、神秘的な感覚であり、個人的には、好きなlogicの組み立てだった。


監督は、二作しかまだつくっていないわりには、すんなりとはまり込めるシーンが多かった。
「セレステ∞ジェシー」という作品もまた、離婚することで、親友でありたいと願ったカップルが、それをすることで、かけがえのない存在に気づくというちょいと、このシネマにも似ている感覚。



ブレイク・ライヴリーの復帰作。

この題名は、日本題名は、「アデライン、100年目の恋」と、ダサい題名で、あきれてしまうが、
もともとの題名の、the age of adaline というのは、日本語になおすと、「花子の年齢」とでも訳すのだろうか?

「雅子の年齢」でも「清子の年齢」でもいいけれども、「アデライン、100年目の恋」では、なにやら、ただのロマンチック恋愛映画みたいなイメージがあるので、男性客やら、恋愛映画が苦いな人は、それだけで見たくなくなってしまうだろうと思う。


 でも、これは、そうではなくて、いわば、「火の鳥」のように、「不死」を得てしまった人間の心と魂を描いている。

 あるいは、まわりの人達への影響、そして、恐怖、日々逃走しか考える事ができないような息苦しい毎日、自分の愛する子供が、自分より老けて行き、最後には、いつまでも、29歳の彼女に、老婆のような娘が、「ママ」と甘えてくる生活を。


 地球の裏側で、美しい蝶が、羽ばたくと、そのバタフライエフェクトで、そのまた地球の裏側では、たとえば、トラックが事故を起こすとか、雪が降る季節ではない時に雪がふるとか、私たちが、いまだ、とらえることのできない、物理学・科学の法則みたいなものが、しずかに、語られる。

 ちょいと、「アメリ」の冒頭シーンのようなイメージ。



 SF映画で、「コクーン」という名作があった。

 宇宙から、ひそやかに隠された「繭たち=コクーン」が、沈んでいる誰も人がいない大屋敷のプール。
 そこに、遊びに来て、プールを楽しむ老人たち。


 すると、だんだんに、彼らは、若返って行く。
 最初のうちは、喜んで行くが、しだいに、その若返りは、いくつもの、事件を生んで行く。
 元気になりすぎて、浮気をしはじめる旦那達。
 嫉妬に激怒する妻達。



 それと同じように、この映画をひきしめる、ハリソン・フォードが、その妻との間にいろいろと心理的な軋轢を生み始めるエピソードもなかなか興味深い。


 科学的な、チョイス。


 雪、月、隕石、森、プラネタリウム、107年にわたるアメリカの歴史のなかのさまざまなる美しいシーン。服装、ライフスタイル。レトロなフィルムをしずかに、見ている、ブレイク・ライヴリーの美しさ。


 若い女性たちのような、今風な見方は私は年齢的にもまったくできないので、自分なりのイマジネーションで、楽しんでこの映画を見て、そして、なかなかに、心に残るB級以上の感動を胸にして、映画館を出た。


 「死がすべての文化を産む」という誰かの言葉が胸をよぎった。