吉川よしひろのチェロ  93歳のアメリカ老人ホーム女性 |   心のサプリ (絵のある生活) 

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数年前のことですが。



♬今回結ホール実演♬

友人Tさんの結ホールにて、吉川よしひろ氏のチェロの公演のことです。




凝縮した時間。
一瞬の中の永劫。
闇を縫うチェロの音の贅沢。


チェロの音というのは、私の勝手な意見ですが、実に「貴族的」です。
だから贅沢な雰囲気を観客に感じ取らせることができるのでしょうか。
在る時には腰まで響く地獄の思い低音のオルガニズム、在る時には脳が痺れるほどの高音の快楽。

いやあ、ほんとうに痺れます。


彼は、チェロだけではなくて、左足でループサンプラーを自由にとりあつかうので、音楽に幅がさらに広がります。




タンゴあり、童謡あり、CMあり、ニューヨークオリジナル曲あり、最後には、彼はこんな話をしてくれました。





彼が、いろいろな各国をぐるぐる旅をしながら演奏をしていますが、ある時、アメリカの老人ホームに行って演奏をしたときに、たぶん日本の曲もその選曲のなかにいれたんだと思いますが、演奏が終わって、ひとりのご高齢の女性がすっと近寄って来たというんですね。





「今日は、ありがとうございます。」

きれいな日本語ではっきりと言う彼女。



目には涙がたまっていたのかもしれません。






彼が言うには、演奏を始めるとどこの老人ホームでも、皆、目がきらきらして変容してくるのがよくわかるそうですね。


魂の調律こそが音楽なんです。

そのご高齢の女性が言うには、アメリカの男性と結婚して93歳の今まで一緒に生きて来たが、彼も死んでしまい、私ももう日本に帰る気力も体力も残っていない。
でも、

心のなかにあるのは日本のことばかり。


心の奥にあった日本を思い出させてくれたあなたの演奏に、ほんとうに今日はありがとう、きっとそんな意味だったのでしょうね。






彼は、その夜、その彼女のことを考えながら曲を選んで弾いてくれました。
ここでその曲を紹介できないのは残念ですが、バッハのカノンのような曲でした。 

指でチェロをゆっくりと丁寧につまむ吉川よしひろ氏の横顔。




いやあ、もう最高のクライマックスの曲でした。


彼のCDを買い、握手をして、いろいろ話しました。気さくな普通っぽい方で好感がもてましたね。
友人T氏とともに、その後、興奮をさましに飲みに出たのはいうまでもありません。

いつも行くこれまた友人料理家TAさんのオリジナル温麺を食しました。
こんな雰囲気でした。





冷たいビールで、熱くなっていた脳みそと、魂をさましながら、楽しき夜をすごしました。
楽しき思い出。感謝。