毎日新聞 2013年03月24日 00時03分
懐かしくて思わず手にした人も多かろう。映画・ジャズの評論や欧米文学の紹介で知られる植草甚一(じんいち)さんのコラム集「ぼくは散歩と雑学がすき」が初めて文庫(筑摩書房)になった。行きつけの東京・神田神保町(じんぼうちょう)の書店では文庫部門で先週売り上げ1位だった▲単行本が出たのは1970年。後に「サブカルチャーの元祖」と呼ばれることになる植草さんは既に還暦を過ぎていたが、「ぼくは目をまるくしてしまったんだ」といった軽妙な文体は今読み返しても新鮮だ▲紹介しているのはスタンリー・クブリック監督(植草さんはこう表記した)の映画「2001年宇宙の旅」やフィリップ・ロスの新作小説など。「(最近は)金には不自由しないニューヨークのインテリ・クラスが、マリファナ・パーティーをやるようになった」等々の情報も満載だ▲世界を結ぶネット社会が来るとは想像もできなかった時代。この明治生まれの不思議なおじさんを通じて若者たちはまだ遠かったアメリカを知った。「政治の季節」が終わり始めるころの空気を今の若者が知るのにも格好の本だろう▲同書出版から9年後、植草さんは亡くなった。財はなさなかったが、集めた4000枚ものレコードをタモリさんが買い取ったという「ちょっといい話」も残る▲終戦直後、東京・渋谷に「恋文(こいぶみ)横丁」という一角があり、植草さんは洋書を求めて横丁の書店によく通ったそうだ。渋谷はその後「サブカル」の拠点となり、今また再開発が進む。今日は日曜。渋谷の街を久々に散歩してみようか。「最近の若造は」とか説教はたれず、植草さんのように新しい何かを探しに。
親しいartのともだちから、こんな記事がおくられてきた。
なつかしき、植草甚一さん。
この題名から発せられるオーラ。
私の時代は、誰しもそうだとは思うが、中学生頃までは、まだまだ、フランスの映画や、イタリア映画、ヨーロッピアンの文化がたくさん、ラジオから流れ、映画もそれらの映画が多く、
学校帰りに、そのボスターを見ては、まだ見ることのできない年齢だけに、ドキドキするような
ときめきを感じたものだった。
中学から戻り、親が仕事から帰宅するまでの間に、テレビで、当時、洋画を中継していたので、
「穴」「わたしは夜が憎い」
「チャップリン」「カサブランカ」などだったであろうか。
夢中で見たものだった。
そして、なぜか、母親が帰ってくると、不思議と、慌てて、悪いことをしているかのようにテレビを消した。
たしかに、洋画を見ることは親はあまり良い顔はしなかったような気もする。
高校生になり、映画も自由に見ることができ、ロックやjazzやらのカルチャーがどっと、仲間の間で広まる。
今のゲームの話と同じで、当時は、流行のそれらのアメリカの文化を聞かねば皆の話についていけなかったのである。
自律神経、視線恐怖にやられていた私は高校時代は、自閉の学校生活だったせいか、音楽ばかり聞いていて、大学に入ってからステレオのない部屋で、植草甚一さんなどの本にはまっていった。
当時は、横浜に植草さんがよく現れると聞いていたので、「ちぐさ」「りんでん」「ダウンビート」などにさかんに行ったものだった。
今からふりかえると、この当時はもうアメリカアメリカアメリカ。
フランスの、イタリアの、ドイツの、伝統と歴史のパイにはさみこまれた重厚な料理というよりは、まさに、インスタント的な、破壊的な、瞬間的な、・・・感性のみの、文化ではあったが、
当時の若者には大受けしたのだった。
植草さんは、三日間連続徹夜でアメリカの小説を読みふけって自律神経をおかしくするような、大の本好き。
しかも、変わっているのは、ベストセラーや古典よりも、アメリカの新人作家のみを漁っては、珍本を探して、紹介するのが非常に上手だった。
彼の良いところは、若者と自分の間に線をまったくひかないところ。
いつも派手なTシャツを着ては、たぶん、今でも生きていれば、渋谷にしやがんでいる女の子や男の子たちと、ファッショングッヅについて楽しくおしゃべりをするようなこともしたのではないか。
丸谷才一氏との対談でも、その驚くべき博学と、雑学、独特の美意識には感銘した記憶がある。
私はミステリーをあまり読まないので、ほとんど彼の洋書や、古本の買い方を、学んだ。
今でも、最初に飛び込んだ古本屋で、一冊も買わないとその日一日が不漁、という言葉は私も信じていて、必ず一冊は買うようにしている。
30代の頃にも、神田の神保町で、洋書を見て回った日々。
懐かしい。
この写真は50代の時の神田で古本を買っていた頃のもの。・・・
![心のサプリ (本のある生活)](https://stat.ameba.jp/user_images/20130324/18/huruhon/08/48/j/t02200165_0800060012471244045.jpg?caw=800)
![心のサプリ (本のある生活)](https://stat.ameba.jp/user_images/20130324/18/huruhon/9c/37/j/o0800060012471242455.jpg?caw=800)
今でも、彼の愛した喫茶店があって、私も東京に出るときには必ず寄るところだ。
![心のサプリ (本のある生活)](https://stat.ameba.jp/user_images/20130324/17/huruhon/72/b6/j/t02200165_0800060012471217685.jpg?caw=800)
喫茶「さぼーる」。同じ店がふたつある。増築したのだと思う。
ここのスパゲッティも彼はよく食したと聞いていたが、あまり美味しくないので、というよりも、自分でつくったスパゲッティが一番だと思っているせいか、神田に行くときには、この「サボール」の前にあるラーメン屋に入る。
値段と味のバランスは良いと思う。
![心のサプリ (本のある生活)](https://stat.ameba.jp/user_images/20130324/17/huruhon/75/ac/j/t02200293_0800106712471217686.jpg?caw=800)
![心のサプリ (本のある生活)](https://stat.ameba.jp/user_images/20130324/17/huruhon/0a/ac/j/t02200165_0800060012471217687.jpg?caw=800)
オリジナルの大きさの写真です。
![心のサプリ (本のある生活)](https://stat.ameba.jp/user_images/20130324/17/huruhon/72/b6/j/o0800060012471217685.jpg?caw=800)
![心のサプリ (本のある生活)](https://stat.ameba.jp/user_images/20130324/17/huruhon/75/ac/j/o0800106712471217686.jpg?caw=800)
![心のサプリ (本のある生活)](https://stat.ameba.jp/user_images/20130324/17/huruhon/0a/ac/j/o0800060012471217687.jpg?caw=800)
植草甚一ジャズエッセイ 2 (河出文庫 724B)/河出書房新社
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