冒険女王―女ひとり旅、乞食列車一万二千キロ! (幻冬舎文庫)/大高 未貴
¥800
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大学時代の女友だちからいただいた本。
旅記録は好きなので、ざぁーと、読み、はまっていく。
中国の子ども達が籠に入れられた鳥の横でウンチをする貨物列車のような汽車。
何日も何日も風呂にも入れず、顔をティッシュで拭くと、真っ黒くなるエピソード。
サウナに奇跡的に入れても、氷のような水が使えず、普通の水や湯がなくて困った話。
たくさんのアジア人たちとの交流。助けてもらった感謝の言葉。
真夜中の寒空にてひとりマッチ売りの少女のように向日葵の種をコップ一杯五円ほどで売るウズベキスタンのちいさな女の子。
トイレのお礼のチップをニェットと誇り高く拒否する男の子。
酒を飲んでは著者を口説いてくるおかしなおっさん。
写真もたくさんあって刺激的な本である。とにかくトイレネタが多くひきこまれる。
それだけトイレ関連の話題というのは、まさに「人間ネタ」ということだ。
ふと思ったのは、日本がここまで原爆をおとされても来たのは、世界1の知性とか頭の良さとかではなくて、世界1の「キレイ好き」が本質かもしれないと。
(そしてそれは私の勝手な考えだが、神道が思想というよりも、自然にはいりこんでいる日本人の生活習慣のなのだと思う。とにかく外からもどると、手を洗う。うがいをする。日々、風呂につかる。これは、思想ではなく、まさに日本的な生活のなかに根ざした神道的「みそぎ」だ。)
良いか悪いかはともかく、汚いこと=人間臭いということで、まったくそれを気にしない民族がたくさんおり、それを楽しんでいるという事実。
まず自分の身の回りから清潔にしようとはしない思想と、近代文明の抽象思想は相反するものかもしれない。
感心したのは、よくまあ、レイプやわけのわからん酔っぱらいに絡まれるなどして、危ない事故に遭遇しなかったことだ。
金があり、性にこだわりをもたない独身日本人女性は、東南アジアの好色男性達の絶好の餌食とも聞く。
まあ、本人が納得していればそれはそれでいいのだが。
とにかく、汚い・臭い・不潔・安酒・粗末食のオンパレードの旅なのだが、彼女はそこの果ての果てに、こんな結論を見いだして行く。
「人間ってなんて素晴らしいのだろう」
そして、思わず私が納得したのは次の文章。
「日本のパスボートは世界中どこへ行っても信頼と尊敬を集める、あたかも水戸黄門の印籠のようなものだった。それは過去から現在にいたるまでさまざまなる形で、多くの日本人たちが誠実な姿勢で、世界に貢献してきたということの証に他ならない。私はそんな先人たちの恩恵に与り、無事に旅をすることができたのだと思う」
「自分を愛せない人間が他人を愛せないように、自国を愛せない人間が他国を愛することはできない」
よく簡単に、「国境などなくなれば良い」と言う人に出会う。
そりゃあ、そうだろう。世界の歴史を見れば、自国の戦いなどを通じて皆独立してきた。
日本でも、日本人同士が殺し合って今の日本ができている。
世界もそうだ。
いづれ、何千年後には、地球はひとつの方向になっていくだろうし、世界の人はお互いに混じり合って、美しい子供たちがたくさんあらわれることだろう。
しかしながら。
いまでも、日本のそれぞれの県に先祖代々家や土地を守りながら、自分のそれこそ県の歴史と風土、そこに生まれた人間達の性格=「県民性」を誇りに思っている人がたくさんいるように、未来永劫、何世紀たっても、「自分は○○人だ」ということを誇りに思う人達も、いなくなることはないと私は勝手に思っている。
ひょっとすると、国をきちんとひとつの文明単位として、大事に守っていくということが、わけのわからないグローバニズムなどという甘言に対抗するひとつの思想かもしれない。