親は子供のこころを見抜きます。千里眼というではありませんか。ただし、愛情がある親にしか持てない目ですが。 huruhon
やっと家にもどる。疲れた。
「珈琲一杯のジャズ」を読みながら、サルトルの言った言葉が頭のなかに蘇る。植草さんのように。
サルトルは言う。
「jazzはバナナだ、皮を向いたらすぐに食べてしまわねば!!」
まあ、即興演奏を彼が1947年頃に初めて聞いた感想だから、そう言うのも無理はないでしょうネ。
しかし、最近、若い人で珈琲を豆からひいて飲んだり珈琲の香りを楽しんだりする人がめっきり減りましたね。みんなスタバなんかでもカフェモカですか、あれは昔のカフェオレですよね。
それとjazz喫茶とかクラシック喫茶でじっと音を聞いていられなくなったそうですよね。
だから東京のクラシック喫茶とjazz喫茶は全滅です。
まあ、その分、jazzライブが人気のようで、人肌はやはり恋しいというのは時代は関係ありませんネ。
「マイルスデイビス&ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツ」
というLPをずっと家にもどり聞いていました。
セロニアス・モンクとレッド・ガーランドが一緒に演奏しているのははじめて聞きました。
これはおもしろいですよね。
シュールとバップの、組み合わせですもんね。
やはり、いつも思うのですが、禅問答ではありませんが、まずは基本の弾き方があり、バップがあり、楽しさがありそこにモンクやマイルスが出てくるんですよ。
人はやはり、卵焼きやカレーにだんだん飽きてきますものね。
変わったもの、少し舌に、「おやっ」というものを喰いたくなってくる。
そして、そんなものを喰っているうちに、たまにやはり、卵焼きはやっぱりプレインが美味いね、とくる。
私は白須正子さんの描いた人に決して見せなかったという油絵を見たことがありますが、それはやっぱり見せない方がいい作品なのですが、彼女が絵がいまいちだからといって、彼女の書いたエッセイや彼女の集めたコレクションの数々が駄目だということにはならないでしょう。
小林秀雄さんも確か音楽の楽器はいじっていない筈です。
だから音楽の専門家ではありません。
でも、彼の書いた「モーッアルト」はたくさんの音楽家を感銘させております。
彼はやはり絵は描いておりません。
でも、雪舟の絵を見て本物かどうかを見分ける目は持っていました。
そしてやはり彼の書いた「近代絵画」はひとつの絵を見る目について書いた本としては誰が見てもひとつの鮮やかな視点を提供しております。まことに文学の理想という視点ですが。
画家が素晴しき絵画論を書けるということもないんです。
三島が一度確かどこかに書いておりましたが、ボードレールの言った死刑執行人にして死刑囚ということが果たして人に可能なのか。三島さんは挑戦してましたが。
川上監督はその絶頂期、ピッチャーが投げた球の糸目が見えたというんです。
いわば動態視力です。これは、私もテレビで見たことがありますが、野球選手というのは、日々の訓練で
LPレコードがくるくると回っている状態でそのレコード盤の曲名や演奏家の名前を言えるんです。
ということは見えてるんですね。
スロットのすごい人も回る777が見えるといいますからね。
だからこそ、小林秀雄さんは日々の訓練、ということを常々言っていて私の一番好きな言葉です。
料理でも、スポーツでも、絵でも、音楽でも、子供に対する愛でも、なんでも一生懸命やる人は「見える」ようになるんです。
そこまでやらないと本物ではない。そういうことでしょう。
親は子供のこころを見抜きます。千里眼というではありませんか。ただし、愛情がある親にしか持てない目ですが。
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