精神の変容について彼ほど楽観的な作家はいないのかもしれないが、「至高体験」などの彼の本は私は大好きである。こんどの休みの時に茂木さんの本と同様に記録をぜひ取りたい作家のひとりなのだが、彼が「世界全体を無意味や無感動の色彩で浸そうとする作家達をガンガンたたく」のを見る事は気持ちが良い。
だいたい、私は安吾のニヒリズムの影響は受けたではありましょうが、それは生き方の波瀾万丈に共感しからであって思想自体に興味があったわけでもないし、その他の思想についても調べることはあっても自分が浸されたり犯されたりすることには気をつけてきたつもりである。
ただその中にあって、人の心の中の悪意と善意のアンビバレンツは認めながらも私は、人類は好きであった。
「還元主義」の作家達を私は許せないと20代の頃から思っていましたし、コリン・ウィルソンはその意味でも、頭の悪い発想つまり--膀胱から小便が出るのと同じように脳から意識が出るのだ、というお粗末な不勉強なる考えをする者に対してのアンチテーゼの役割を小林秀雄同様にしてくれています。
茂木さんの仮説では、「量子力学の波動の中で人は意識を持っている」というようなことをいっております。
科学は万能ではないという健全なる思想、人は自然の前ではまだまだ未熟なのだと言う当たり前の考え方、これらのideaを持つ事で初めて次なるステップに進むことができる鍵を発見できるのかもしれません。