「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」      林芙美子 |   心のサプリ (絵のある生活) 

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画家KIYOTOの病的記録・備忘録ブログ
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このところ、仕事がとにかく忙しく、家に戻る時間や、のんびり映画を見たり、池のまわりなどを散歩して
バーで一杯ということもできなくて、ひどい時には昼食抜きで仕事をしていて、へとへとになった。

精神衛生上、この時間の使い方は良くない。

ひさびさの、休日だ。明日も休みをとった。たっぷりの時間といっても48時間しかないのだから、堪能することにする。

朝、ぼんやり、川端康成の「落下流水」を読んでいたら、こんな文章にであった。

「菊池寛氏は用ずみの手紙をみな破棄されるということだった。豊島与志雄氏は毎年暮れにその年の手紙を焼却されるという話である。いろいろな意味でその方がいいのかもしれない。自分のことと考えて、死後に手紙が公にされたり売られたりするのは、あまり、あまり望ましいとは思えない。しかし私はもらった手紙をなんとなく保存している。したがって、その人の死後の全集にもとめられると提出した。梶井基次郎君や北条民雄君の手紙は、その全集の役に立てた。岡本かの子さんの手紙も少し公にした。今また林芙美子さんの手紙を「文学界」からもとめられて出すことになった。芙美子さんの手紙は、家の中を十時間ほど探して三十通余り見つかった。公にしてさしさわりのあるものはなく、また深く立ち入ったものもない。しかしどれにも芙美子さんらしい心づくしは現れている。


○昭和七年  十月七日
倫敦-ロンドン-にて

「落葉」読みました----、何度も。此頃此様な素晴らしいものを読んだ事がありません。一度もお話を
しないなんて、十年くらいも昔から知っていて、同じ道にあるものが、何度もキカイを持っているのに、そのまま通りすぎて、お元気ですか。私も早く帰りたいと思います。主人と犬がまっています。大変雑種で
大きな犬ですが、ぬけてて遠くへ来るとよけい思い出します。犬のシンケイは人間より正直でキレイだからでしょう。」


私も性格的に、手紙などは捨てられないタチだ。
どんどんたまってくる。そして、繰り返しみるわけでもないのに、捨てることができない。
それらの手紙が文学者の手紙のような売り買いされるわけてもないのに。

音楽と同じくそれを見ているとその時に自分がしたことされたこと、空気からはじまり、喫茶の独特の匂いまでが、まさに蘇ってくる。

このようにして私の休日のはじめの驚きは林芙美子が従軍作家だったことである。
先日も放浪記がシアタークリエで1900回前人未到の記録とある。
森光子がでんぐりがえしをするシーンはこの2.3年で禁止と聞く。

そりゃあそうだろう。87歳ですもんね。安吾もこのでんぐり返しで、50歳でなくなっている。
思えば、セルロイド女工・カフェ女給・アナキスト詩人との恋・島男との初恋・点々と職を買えながら俳優への道も狙うという、さながら、今の世でも通用するパワーを持つ女性であったらしい。
48で逝っている。

女性がそんな時代に尾道の東高校という名門の裕福な女性ばかりがいるところで苦難の道をすこしも出さずに今に見返してやるという気持ちで頑張ったのであろう。

川端康成におくった彼女の手紙を見ていると今の普通の奥さんだ。
旦那とともに鎌倉の川端康成さんのお宅に子供をつれて遊びにいったということも書かれてあるが、
良い意味で派手さのない平凡で幸福な文章だと思った。