与論島の野鳥 No80 竜の渡り (最終回) | さすらいの風来簿

与論島の野鳥 No80 竜の渡り (最終回)

「広報よろん」 平成8年(1996年)11月8日発行 第219号

 

 

 

・ヒヨドリ

     科

        方言名:ピュードゥイ

 

             * 写真のコピー、ダウンロードを禁じます。

 

 

ここ数年では珍しく今年の秋の渡りは賑わっていた。


8月20日のキセキレイの初認を皮切りに、セイタカシギ、ツバメ、ムナグロ、ダイゼン等が8月中に渡ってきた。


9月にはいるとキョウジョシギやキアシシギなどのシギ類やサギの仲間、ミサゴやチョウゲンボウなどのワシタカの仲間も去年よりも早めにやってきた。


前回会ったのがいつだったかすぐには思い出せないほど久しいモズの姿には古い友人に再会したような懐かしさをおぼえた。


今年の渡りの特徴は群で渡る種が多かったこと。


種の確定はできなかったが30羽程のタヒバリ類の群や、数百羽ものコムクドリの群、50羽程のハクセキレイ、十数羽のサンショウクイ等。


そして最も目に付いたのが付いたのがヒヨドリ(ピユードゥイ)の群。


9月の中旬あたりから常に数十羽規模の群があちこちで飛び回っていて賑やかだった。


留鳥のヨドリ達(亜種)も呼応するように「ピーヤ、ピーヤ」と鳴き騒ぐからよけい目に付く。


近くで騒がれるとうるさいだけの連中だが、鳥との長い付き合いの中でも一、ニを争う鮮烈な感動を与えてくれた鳥でもある。


雲ひとつないよく晴れた日の早朝、爽やかな北東の風に乗って「ピイッ、ピイッ」とよく通る声が耳に入ってきた。


海岸沿いのモクマオウ林の向こう側あたりから聞こえてくる。


声のする方に意識を集中する。
声は次第に近づいてくる。
どうやら相当の数らしい。


見に行くつもりでモクマオウ林の近くまで来た時、突然モクマオウの林を乗り越えてヒヨドリの大群が現れた。


「ピイッ、ピイッ」と鳴き交わしながら次々に頭上を通り過ぎていく。


数百羽にも及ぶ巨大な群は後にも先にもその日を除いては遭遇していない。


圧倒的な光景にしばらくの間ただ呆然と眺めていた。


モクマオウ林を中心に数百メートルの範囲を行ったり来たりした後、再びモクマオウ林を飛び越えて海の方へ向かった。


海にでると、群は一斉に急降下をして、そのまま海面すれすれのところを蛇行しながら寺崎海岸の沖を、西の方へ消えていった。


姿が見えなくなってからもしばらくの間「ピイッ、ピイッ」という声は聞こえていた。


「竜の渡り」とも呼ばれるヒョドリの蛇行の群飛行は、ハヤブサなどの猛禽類の急襲をかわすために身に付けた集団自衛術だといわれている。

 

 


あれから十数年、群の規模は数十羽程度と小さいが、今年も何回か「竜の渡り」を目にすることができた。
                                                  (ヨロン野鳥友の会)   

                                 

 

星 星の写真は、こちら に掲載しています。